第24話 ナンバープレースもやりましょう

 結局、ナンバープレートを無理矢理生かした栞を作ることになった。

 どんなものかというと、誕生日プレートである。

 例えば、七月二十一日が誕生日の人には「7 21」のナンバープレート写真をプレゼントするという、ありがたみは微妙なものだ。納得させる案を捻り出すのに時間を食ったことは言うまでもないだろう。

 探せばわりとあるもので、ナンバープレートとバレないように数字部分を切り取って少しオシャレにと枠を貼って……これを300枚強である。

 ご当地ナンバー入れないのとか色々揉めたけど時間がないので無視です、無視!

 ナンバープレースの作成もなかなか大変だった。今回作れたのは三種類。それを100枚ずつほど印刷してもらい、ようやく完成。レポートを書いている暇はなかった。

 目まぐるしく過ぎていく毎日。けれど、先輩たちには雑談をするくらいの余裕はあった。これが年の功というやつか。くそぅ。

 どうやら去年も作成している分、手慣れた様子で、篠原先輩が案外手先が器用なことが発覚した。がさつと思っていましたごめんなさい。




 とりあえず……

「間に合った……!」

 出来上がりを見て、背もたれに盛大に凭れかかる。背もたれはその役目をいかんなく発揮し、僕の背中を受け止めてくれた。この世で一番頼もしいやつの気がする。

 色々おかしいかと思っていたナンバープレート栞も、見てくれはそこそこのものになった。

 なんか部活をした感がある。ナンバープレースも作ったし。うん、ナンバープレースがついでになってるけど、本当はナンバープレースの部活のはずだからね!

 高文祭前日、セッティングに駆り出される。そういえば男子部員の少ないナンプレ部。しかもうち一人は男の娘仕様である。

 セッティングには霞月先輩、葉月先輩、僕で向かった。場所は入り口近く。わりと人目につきそうなところだ。

 机を数脚並べて、受付用の椅子に座る。パネルには「春ヶ崎高校ナンプレ部」と貼る。「ナンバープレース部」じゃないのが惜しいところだ。かといって「ナンバープレート部」なんて貼ろうものなら、入口から大事件である。ナンプレ部でいいのだと自分に言い聞かせる。


「あ、純也!」

「あれ、学?」

 思わぬ幼なじみの出現に僕は頓狂な声を出す。が、よく見れば奥の方には「夏之前高校文芸部」という展示が。そう、これは総合高校文化祭。他校の生真面目な文化部に文芸部が含まれるのは当たり前のことだろう。学もこっちに来ていたというわけだ。

「いいのか? 油売ってて」

「うーん、芥見先輩が美術部と揉め始めたから逃げてきたとこ」

「おいおい」

 止めろよ、と思いつつも、自分が置かれた立場がそうなら逃げるかもしれない、と言葉を飲み込んだ。聞くに、芥見先輩とは随分と難儀な方らしい。

「ナンバープレース出すんだって? よかったじゃん、純也」

「もう話行ってんの? 早いな」

 親友に祝福されて嬉しい限りである。紆余曲折あったが、僕の求めていたナンプレ部に一瞬なるのだ。

「ナンプレ、純也作ったの明日やるから!」

「一番難易度高いって言われたけど……?」

「僕を誰だと思っているんだい?」

 嫌味か、このチート野郎。


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