第21話 ナンプレはもうたくさんだ

「他にも、"宮ナンバー"って知ってる?」

「宮? どっかの地名にあったような」

 あ、でも宮市っていうのは知らないな。宮町ならいっぱいあるんだけど。

 というのも、ナンバープレートの基本中の基本知識だが、ナンバープレートに記載されるご当地ナンバーというのは大抵が道府県名、市区の名前だ。町の名前はない……はず。

 ちなみに宮町というのは全国各地にあり、福島県福島市宮町、千葉県鴨川市宮町、兵庫県宝塚市宮の町、三重県伊勢市宮町、などがある。わりと多いのだ。まあ、一ヶ所宮の町だが見逃してくれると幸い。

「センパイとお兄さまのお話はハイレベルですねぇ」

 翔太先輩がニコニコとしている。おっ、もしかして、ご当地ナンバーオタク故に知っているのだろうか?

「宮ナンバーって言ったら、昔の宮城県のナンバープレートじゃないっすか!」

「……え」

 まじですか。

 驚く僕に、学が解説する。

「父さんがさ、クラシックカーっていうの? が好きで、こないだ昔の車見て興奮して写真撮ってたのをたまたま見たんだ。するとその車、車体は現在走っている軽自動車より小さいのに、白いナンバープレートなんだよ」

「えっ、おかしくないか!?」

 僕もそう思ったんだけどね、と学は続ける。

「普通自動車と軽自動車の違いって、エンジンの大きさ? だったっけかな。だから車体の大きさは関係ないんだって」

 これまた一つ勉強になった。にしても学は詳しい。父親がクラシックカー好きらしいが、それにしても記憶力がいい。

 ナンプレ部一同も感心している。さすが類友とか聞こえるけど、僕も学もあなた方の類友ではありません。

「それで、"宮ナンバー"が宮城のナンバーっていうのは?」

「あ、そうそう。今でこそ"宮城580"とかなってるけど、昔は宮城を略して"宮"ってなってたんだって。だからその頃の車は未だに"宮ナンバー"で走ってるんだって」

「親方、でもそれじゃ宮崎とかぶっ」

 何か言いかけた篠原先輩が翔太先輩のアッパーにより吹っ飛ばされる。パイプ椅子が盛大にこけ、かなり五月蝿い。御愁傷様です。

「そんなメタなこと言っちゃだめだよー。っていうか宮城と宮崎どんだけ離れてると思ってるんですかー」

 北国と南国と言い分けられるくらい離れていますね。

 とはいえ、アッパーはひどいと思います。後ろの本棚にぶつかった篠原先輩痛そうなんですが。ニコニコ顔の翔太先輩怖いですよ。

 ご当地ナンバーの恨みは買うまい……

 けれど、篠原先輩の言うこともその通りだ。"宮"と略していたのなら、宮城と宮崎なんてだだかぶりである。なんだろう、宮崎は"崎"とか略していたのかな。シュールだな。

 もしかしたらその辺りの理由もあって変わったのかもしれない。自動車が一般家庭に普及するようになったのは、歴史を長い目で見ると最近のことだし。

 予想以上に車が溢れ、ナンバープレートを制作するのも大変になってしまったのだろう。ナンバープレートは自動車の本人証明みたいなものだから、他と被ってはいけない。

 故にご当地ナンバーとかもできたのだろうし……こうして成り立ちから考えると、なかなか奥深くて興味をそそられる。

「なるほど、ナンバープレートの歴史ね……今度の文化祭のネタにいいんじゃない?」

 僕の考えを聞いた霞月先輩がふと呟いた。






 ええと、ええと、文化祭?











 What!?


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