第17話 活動方針

「ところで、結局ナンプレ部ってどういう活動してるんですか?」

 学がいたって普通の問いを投げかける。まあ、当然の質問だろう。学には僕から話した断片的な情報と、ナンプレ部メンバーの色の濃さくらいしか伝わっていない。それでもナンバープレートについてなんだろうな、と半ば理解し、通常の対応ができる学のコミュ力はやはり僕より遥かに上だ。

 玄関前のやりとりがあったせいか、学も会話に交わることに部員たちはなんの違和感も感じていないらしい。

 もはや昨日の僕と同等……他校の生徒であるにも関わらず、半分部員として自然に扱っているというか、馴染んでいるようだ。驚くべきほどの学のコミュ力に僕は驚嘆と一抹の不安を感じる。

 やめてくれよ。沼に引きずり込むのは。学とは普通の友達でいたいから。

 けれど僕のそんな心配をよそに音無部長が滔々と語り始める。

「部の大まかな活動方針としては、部員一人一人の意思を尊重しつつ、ナンバーコレクトに努めていくというものがある」

 おお、案外まともに聞こえる。"ナンバーコレクト"という単語に目を瞑れば、だが。

「大抵が自分が見つけた珍しいナンバーの紹介やナンバーコレクトの進み度合いを発表するといった感じのものだ」

 ……どうしよう。僕もうこれが普通に聞こえるよ。学助けて。

「ナンバーコレクト、ですか……」

 や、学よ。助けてってそういう意味じゃない。というかそこ掘るの? スコップシチャウンデスカ?

「いや、あまり不安そうな顔をしないで純也。純粋に面白そうな考え方するなって思ったのと……」

 おおっ、学の心はピュアホワイツッ! 一点の曇りも……

「……のと?」

 珍しく言葉を濁らす学に、なんとも言えない予感を覚える。そう、当たったらきっと碌な思いはしないタイプの予感だ。なんでわかるかって? ……経験則だよ。もういや。

 呪わしいことにその経験則はどんぴしゃに当たってしまう。




「いや……最近どっかで聞いたなぁ、と」






 この学の言葉には、何故か僕以外の部員の皆さんも凍りついていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る