08話 世界一周旅行

 DAY2


「世界・・・一周か、ハア」


 今日も10キロを走りながら昨日のことを思い出す。

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~前日・夕刻~


「えっと、世界を周るってどういうことですか?」


 いまいち状況がつかめず困惑気味に問いかける。


「そのままの意味だよ。それで君には神授武器を集めてもらいたい」


「神授武器を・・・集める?」


 そういえば鑑定をしてもらった時、俺は複数本使えるって言われてたな。

 使える分だけ集めろって事か。でもそれと世界一周に何の関係が・・・。

 ていうか。


「なんで師匠は俺が複数本使えること知ってるんですか?」


「マウロスとの戦いや特訓で思ったんだ。君の神授武器は弱すぎる」


 ぐう・・・神父にもパワーが落ちるとは聞いていたけど、実際に言われると心に来るな・・・。


「君の身体能力が低いのもあるだろうが。それにしても弱い。だから複数本使えるんじゃないかと思ってね」


「まあ、はい・・・その通りです」


 師匠のさりげないディスに更に精神的ダメージを負う。

 多分無自覚なんだろうけど言葉は選んでくれよ・・・師匠。


「それでなんでそれが世界一周と関係あるんですか?」


「実は神授武器にはある特徴があってね」


「特徴?」


「授かる武器が地域によって違うんだ。君は国の位置は分かるか?」


「いえ・・・お恥ずかしながら・・・」


 すると師匠は地面に図を描き始めた。

 星マーク★を書いたときに、丁度5つの頂点が来る位置に丸を書いた図だ。


「この国の配置通りに武器も分布している。上から右回りで。【剣】【弓】【双剣】【大剣】【槍】、の順だ」


 地面に書いた図に指をさしながら話す。

 ていうことはルドベキアは一番西にあるって事か。


「とは言っても武器の名称も名ばかりで。大体の特徴を抑えているだけで、形は様々だ」


 確かにマウロスが持ってたのも爪みたいなやつだったな。

 この中じゃ【双剣】の部類になるのかな。

 ジャンル分けが適当だとマニアに怒られるぞ~。


「それで武器が欲しかったら、ここに対応する土地まで行かなくちゃならない」


 パッケージ版のみって事か。今時ダウンロード版がないって職務怠慢じゃないか。

 引きこもりの腰は重いんだから勘弁してくれ。


「そういえば俺神授武器の貰い方って知らないんですけど。槍もいつの間にかもらえてたし」


 あのときは流れでいつの間にか、だったけど今後もそうとも限らないし。

 まあ軽く予想すると危機的状況で~とかそんな感じだろうが。


「持っていないから私もよくは分からないんだが。人の大きな感情が出たとき、あとは死の淵で、とかそんな風に聞いている」


「抽象的過ぎてよくわからないですね・・・」


 やっぱりそのパターンか、というところだ。

 結局は死にかけなきゃいけないんだろうが、判定もよく分からないし難しいところだ。 

 というか師匠。意外と神授武器持ってなかったんだな・・・。


「自衛のためにも手札は多い方がいい。君の火力だったら5本という可能性もある」


「分かりました・・・」


 一人前に生きれたらそれでよかったんだが。戦うべき相手はかなり手ごわそうだ。


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 時は進み現在、10キロランニング後。


「気が遠くなるな」


 5本集めてやっと一人前ってところか。

 1本の力じゃ劣ってるってことは、魔法とかのからめ手とかシンプルに戦闘の技術を高めていかないと、どうしようもないってことだ。

 石に腰掛け水分補給をしながらため息をつく。


「ゆっくりやっていくしかないから、あまり気負わない方がいい」


「それもそうですね」


 何もあいつらとも絶対戦うわけじゃないかもしれないし。

 もう少し気を楽にしておこう。


「ああそうだ、昨日からルドベキアに定期的に君の分体を歩かせるようにしているんだ」


「俺の分体? 俺分身できませんけど・・・」


 いつの間にか種族が人間からアメーバにでも進化したのか?


「正確には幻覚の魔法で、私が死んだように見せた魔法と同じものだ」


 師匠のあれは魔法だったのか。

 魔法もいろいろ使い道があるんだな。それはそれとして心臓に悪いから二度と使わないでほしいけど。


「今は何ともないが、奴らから接触があればまた教える」


「分かりました」


 師匠の存在がばれるのも時間の問題だし、反応があるまでにできることはやっておきたい。


「よし! 今日も戦闘訓練お願いします!」


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「くあ~・・・疲れた~早く寝て~」


 今日の特訓が終わり薄暗くなった村を体を引きずるように歩く。

 2日目にして少々折れそうにもなったが、この調子ならやっていけそうだ。

 やはり朝起きて体を動かすと精神面にもいいのだろうか。


「昨日教えたことは少しはできていたし、まともに戦える日もそう遠くないかもね」


「ほんとですか? 昨日と変わらずボコボコだった気がしますけど・・・」


 実力差がありすぎて自分が成長してるのかどうかもわからん。そもそもまだ二日目だし。

 やっぱり同レベルのライバルとか、いた方がいいんだろうか。


「ん? なんだこれ?」


 自分の部屋でさっさと寝たいところだったが。宿の入り口に貼ってある一枚の紙に目が行った。

 昨日こんなのはなかったはず。


「なになに?『村おこし企画。剣術大会を開催いたします! 腕に自信のある方は以下の場所にてご応募下さい!』か」 


 広告か。村おこしってのはどの世界でも行われてるもんなんだな。

 優勝賞品はよく分からん石ころ。誰が欲しいんだよこんなの。


「腕試しに丁度よさそうだね、出てみるか?」


「え、でも大会なんて。俺そんな戦えませんよ。それに参加条件とかも・・・」


 もう一度広告に目を向ける。

 参加条件は・・・特になし。神授武器でも可。

 日程は・・・今から2週間後ってところか。


「2週間で大会はちょっときつくないですか?」


「別に一回戦敗退でも自分の実力ぐらい図れるだろう? それに目標があった方が特訓のし甲斐があるっていうもんだ」


 うーん、ごもっとも・・・恥も承知で応募してみるか。

 あれこれ考えて渋るのも俺の悪い癖だ。


「じゃあ応募してみます!」


 一回戦敗退のつもりで。

 交友関係を深められるかもしれないし、参加費用もない。

 いいことづくめだ。細かいことは無視無視。 


「なら大会用に特訓内容もテコ入れしないとな」


 もうすでにちょっと後悔かも。


「それは・・・優し目でお願いします」


 自分の発言に後悔しながらもこの日は眠りについた。







 

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魔人の弟子 ポポ三太郎 @nasaka

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