大文字伝子が行く175

クライングフリーマン

大文字伝子は年中無休(前編)

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 村越警視正・・・副総監付きの警察官幹部。あつこがEITOに移ってから、副総監の秘書役を行っている。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。

 江南(えなみ)美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

 河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。

 久保田管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。

 中津健二・・・中津興信所所長。

 中津(西園寺)公子・・・中津興信所所員の1人だが、中津健二と結婚している。

 中津敬一警部・・・中津健二の兄。捜査一課、捜査二課、公安課、EITOとの協同捜査等を経て、副総監付きの特命刑事となる。警視庁テロ対策室所属。村越警視正の部下。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。

 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。今は、非常勤の海自事務官。

 山城(南原)蘭・・・山城の妻。南原の妹。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。

 依田(小田)慶子・・・依田の妻。やすらぎほのかホテル東京副支配人。

 小田祐二・・・やすらぎほのかホテル社長。伊豆のホテルが本店。箱根にもホテルがある。小田慶子の叔父。

 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築設計事務所に非常勤で勤務。

 福本(鈴木)祥子・・・福本が「かつていた」劇団の仲間。福本の妻。

 南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。元高校の国語教師。妻文子と塾を経営している。

 南原(大田原)文子・・・南原の妻。

 服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。

 服部(麻宮)コウ・・・服部の妻。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 本郷隼人二尉・・・海自からEITO出向のシステムエンジニア。本郷弥生2等陸佐の弟。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午後1時。やすらぎほのかホテル東京。宴会場。

 今日は、伝子の全快祝いのパーティが行われていた。丸テーブルが幾つも並び、テーブル席以外にも、料理が用意されている。まるで、誰かの結婚式披露宴だ。と言うのも、実は、式のキャンセルが出たので、小田社長が無料招待し、用意させたのだ。本来は、依田や慶子はスタッフだが、「大文字伝子の身内」という出席をしている。しかし、進行は依田と慶子が行っている。

「何はともあれ、ご挨拶を副部長から。」と、依田は、マイクまで移動し、物部を呼んだ。「ん。依田はやっぱりMCが上手い。さて、大文字。流産にもめげず、よくリハビリしてくれた。事件が起こる度、陰でエマージェンシーガールズをサポートしてくれた、と一佐から聞いている。俺達も鼻が高い。DDメンバーのリーダーを誇りに思っている。とにかく、乾杯だ。退院おめでとう。乾杯!」

 皆、異口同音に乾杯した。

 伝子が手招きをしたので、慶子が伝子のテーブルにハンドマイクを持って行き、伝子に渡した。

「みんな、こんな豪勢な退院祝いしてくれてありがとう。実は、一つ謝っておかなければいけないことがあります。」「何ですか?」と福本が、つい発言した。

「あなた、聞きなさいよ、先輩の話を。」と慶子が窘めた。

 伝子が、子供のことを告白するのでは?と高遠は内心ヒヤヒヤしたが、そうでは無かった。

「昨日の退院襲撃は、予想し警戒した上のことでした。そこにいる、中津興信所の根津所員から連絡を受け、大町と警戒態勢で出発しました。敵は、高速で待ち受けていました。トラックは燃料を殆ど空にしてから、横転しました。そう、ハンドル操作を誤ったのではなく、わざと横転させたのです。」

「え?スタントですか?」と若い高木が思わず叫んだ。

「凄いテクニックだな。」と山城が呟き、蘭が袖を引いた。

「そうです。南部さんにお願いして、東栄経由でフリーのスタントマンを見付けました。事故を110番したのは、後続車のドライバーではなく、彼自身でした。発火装置を着けて、キャンピングカーに一緒に乗りました。交通整理の偽警官は、バイトの素人を半グレが雇ったんです。」

「今朝、レンタルの衣装を返しに来たそうよ。手下がすぐに警察に逮捕、連行したわ。」と、みちるが言った。

「取り調べをした橋爪警部補によると、闇サイトのバイト募集に応じたようです。映画の撮影だと信じていました。」と、愛宕が言い添えた。

「最近は、色んなサイトがあるんだなあ。」と、服部が感心した。

「半グレの会社のPCに、以前犯罪に使われたChot GPTがアバターの姿で指示を出していました。」

「じゃ、大文字。『操られ系』の犯罪か?」

「そう。サンドシンドロームが直接関与していなくても、ダークレインボーとは無縁とも言い切れません。」と高遠が伝子の代わりに応えた。

「僕から、少し、補足しましょう。Chot GPTとは、過去のデータから推測するプログラムのことです。過去に、闇ネットに利用され、その指示通りに罪を犯した者達がいます。今回は、そのパターンです。そのプログラムは、材料となるデータを入力すると、こういう犯罪が可能という、言わば『犯罪のレシピ』を造ってくれるのです。」と本郷が説明した。

「レシピ・・・じゃがいも・牛肉って入れたら、カレーとかすき焼きのレシピ出してくれるとか、そんな感じかしら?」と、文子が言った。「それは、便利ね。」とコウは同調した。

「うまい例えですね。そんな感じですね。」と、本郷は笑った。

「僕は、そのレシピに従い、先の文章を見ると、誘拐した我々とお金を那珂国人に渡して、麻薬を入手する計画を掴んで、先回りして貰ったんです、エマージェンシーガールズに。そして、愛宕さん達に連絡して、待った。」と、高遠が言った。

「横転と、DDバッジのショートが想定外だったけど、上手く行った。」と伝子が言ったが、「以前のもそうだったけど、そのPCからは盗撮されていて、失敗とみるや通信記録を消した上で、自動的にアプリを削除しています。」と高遠が残念そうに言った。

「ま、皆が知りたがっているの事件の概要は、こんなところだ。小坂と下條は襲われることを知らなかったが、よくやった。」と伝子が言い、だから褒めたんだよ。」と、あかりが言った。

「先輩―。」と言いながら、小坂と下條は、あかりの両頬にキスをした。

 あかりは、目を白黒した。

「さあ、そろそろ、目の前にあるご馳走から頂こうじゃないか。」と物部がまとめた。

 宴会は3時間でお開きになった。一日貸し切りではないのだ。

「井関さん。これ、上で待機しているジョーンズさんに。ツナサンドと卵サンドです。」と、慶子が井関に渡した。

 皆は次々と、ホテルから出て行ったが、愛宕は、陰に潜んでいた中津健二に尋ねた。

「異常は?」「おおあり。様子を伺っていた者を、ウチの高崎、泊が尾行中です。油断大敵という言葉がありますが、大文字さんには隙がないのですね。」

「いえ。そんなこと言ったら、怒られますよ。隙を突かれたことは、何度もあります。だから、入院中に、昨日のことや今日のことの善後策を練っていたんです、ベッドの上で。」

「やっぱり、叶わないな。兄貴が『普通の人じゃない』って言う訳だ。」

 感心する中津に、「じゃ、我々は署に戻りますので。」と言って愛宕は、待っている、みちるとあつこの元に小走りで近づいた。

「俺達も、一旦会社に戻ろう、根津。運転頼む。」「了解しました。所長、飲んでいるんですか?」「ちょっとな。交通ルールは守らないとな。」

 2人は駐車場に急いだ。

 その様子を物陰から見ている者がいた。更に離れた所で、監視している者がいた。

 午後4時半。やすらぎほのかホテル東京。屋上ヘリポート。

 元来は、救急のヘリポートだが、オスプレイが2機とまっている。

 なぎさが、伝子を呼び止めて、「おねえさま。愛宕さんから、やはり張り込みしている人間がいた、と報告がありました。」と報告した。

「そうか。他の者はEITOに帰り、今日はバイクで送ってくれ。」「いいんですか?」「台所の出入りはリスクが大きい。止むを得ないだろう。」「了解しました、おねえさま。」

 なぎさは、オスプレイの発進前、江南と工藤に声をかけた。

 ―完―

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