213話、四層へ


ドラムちゃんは、二層で他のボスたちと色々しといて貰うことにした。帰りが楽しみだ。


ということで、日付が変わり、96日目。

テイム回数が回復したので、四層へ降りることにする。


「次はどんなところだろうなあ」


「できればまともな環境がいいっすね」


「なのです」


暑かったり寒かったり、足元が悪かったり見通しが悪かったりするのは面倒だ。


四層に到着。

暑くも寒くもなく、足元も見通しも悪くないところだ。


「いや、にしてもじゃないっすか?」


「うん、にしてもこれはちょっと」


「きもちわるいのです」


「刀使いたくないのう」


四層は、少し荒廃した平地だった。

ところどころに、車や戦車、銃などの残骸が転がっている。

そして、この層のモンスターは、ゾンビだった。

それも、走るのがめちゃくちゃ速いタイプの。


「な、なんとかして! 気持ち悪い!」


「こういうのはタキナ、お主の魔法を使うべきじゃろ!」


「あそうか! 『アブソリュート・ゼロ』!」


前方に迫っていたゾンビは、その空間ごと動きをとめた。

凍った世界を見て、ちょっとやりすぎたかもしれないと思った。が、ゾンビ気持ち悪かったしいいや。


「威力すごいっすね」


「魔力込めすぎたかも…… 私そんなに魔力あったっけ?」


「魔物吸収のせいじゃないっすか? スキルとかだけじゃなくて、能力値も貰えるとか」


「そうなのかなあ。まあ多いなら多いでいいか」


「そうっすね。魔力が尽きると魔力酔いってやつになるっすけど、まあその前に気持ち悪くなるからその時点で止めるんすよ」


「あ、はーい」


魔力酔いなんてものがあるのか。

前世のファンタジー知識では、相当苦しいらしいし、気をつけよう。


「進むのです」


「見渡す限り凍っておる。氷結エリアじゃなこれは」


凍った地面を、各々のやり方で進んでいく。

見える範囲全部が氷だ。ちょっとやりすぎたとは思っている。でもゾンビは臭いしキモいし速いから仕方なかった。

この感じだと、ボスもちょっと…… 嫌だなぁ。気が滅入る。


しばらく、平地を進む。

戦闘も今のところ無い。見渡す限りゾンビの氷像だ。


「物量タイプのエリアっすねえ」


「ゾンビいっぱいなのです」


「さすがにこの数は、雑魚でもつらいのう」


数千、数万はいるだろう。近接系の人だと匂いもつらいし、魔法系の人も魔力がつらかろう。まあ私たちはそれぞれが一騎当千というか、常識外の存在だから問題はあまりないだろうけど。




ようやく、ボスがいるだろう場所へ到達した。

平地の地続きではあるが、そこだけ氷漬けから逃れている。


そこには、つばの広いトンガリ帽子を被り、大きな魔法杖をもった、魔女がいた。


「ガキっすかね」


「ちっさいけど魔女よ?」


「同じくらいなのです」


「アレも魔物かのう」


その魔女ガキは、こっちをキッと睨み、叫んだ。


「あたしはガキじゃない! 三百歳のオトナだ!」


……声も子供だなあ。

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