212話、三層ボス戦……?


「せっかく頑張ってエリア全体に魔法かけてたのに! もう! ……こうなったら直接戦うしかないのか」


なんか面白いやつだなこいつ。ここまできたら、どうやって戦うかも見たいが……


「背に腹はかえられぬ、ってやつだなあ。テイム!」


「……マジか!」


無事にテイム成功。

96日目になる前にボスをテイムできた。順調だな。


「マジマジ。よろしくね、ドラム……くん?」


「ドラムちゃんだよ! 女の子だからね!」


オオサンショウウオの見た目でオスメスなんかわからないよ……


「人の形にもなれるけど、どうかな?」


「あ、人間形態でお願いします」


「わかった! ……どうかな?」


こ、これがオオサンショウウオの擬人化!

……なんというか、ヒト部分が多すぎる。ちょっと残念。いや、可愛いけど。思ってたのと違う。まあでもオオサンショウウオの部分が多い擬人化もイマイチ思い浮かばないし、こんなもんか。


「かわいいよ」


「うんうん、かわいいっす」


「かわいいのです」


「なーんか適当じゃない? なによ?」


「いや、どこに元の面影があるんだろうって」


「元の面影が少ない方が高度な人化なんだよ?」


それはわかるけどさ、理屈じゃないじゃんね。

……ああ、一応、魔物情報を見るか。



ドラム。

とある世界のとある地域で封印されていたドラゴン。

伝承では、その地域を数年間も雨で苦しめたので勇士に封印された、とされている。

超規模の水魔法を得意とする。土魔法と風魔法も少し得意。

好物は米と魚。



米食うのかよこいつ。意外だな。

それと多分、苦しめたくて苦しめたわけじゃなさそう。こいつ馬鹿そう…… いや、INTが低そうだから人間の事なんか考えてないと思うな。

でも人化できるのか。じゃあ人間の事考えてるよな。


「なんで雨降らせたの?」


「だって雨降らせてくださいって言われたから…… 我、頑張ったのになあ……」


ああ、ただの加減をしらない馬鹿だったか。これだから人外は。




三層をクリアしてしまったが、日付が回ればあと二回のテイムができる。

とりあえず、日付が回るまでは三層で休憩し、その後四層に向かおう、という話になった。


「おべんと食べるのです」


「マリア、それなに?」


「バームクーヘンなのです!」


バームクーヘンの穴に生クリーム詰まってるし、バームクーヘンの外側には甘そうなチョコが塗られている。カロリー凄そう……

私は普通にのり弁当、ヒナは多分カルボナーラのパスタ、ムサシは鰻丼を食べる。


「ちくわ天が美味すぎる」


「やっぱウチのご飯が最強っすねえ」


「こっちでも色々食ったが、アグニ王国にはさすがに及ばぬわ」


素材のレベルが違いすぎるのよね、ほんとに。

こっちで色々食べてるのは、国の料理の発展に役立てるためでもあるから。こういうのが美味しかったとか、こんな香辛料の使い方してたとか、そういう情報を収集している、と言ってもいいだろう。


「でもこの…… ポテチのジャンク感は、まだウチには無いよね」


「この安っぽさ、体に悪そうな油の味、適当な塩加減、クセになるんすよねえ」


「コレをツマミに、こっちの安酒を呷るのがまあ美味い。こういう下品な飲み方は、あっちではしづらいんじゃよな」


「どうしても上品な味になるのですよ」


そうなんだよねえ。たまには悪いものも食べたくなる。人間って欲深いねえ。

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