214話、四層もクリア


「あたしの名はブーディ! 能力はゾンビ召喚! あんたたちが倒したゾンビも、もうあたしが魔力を回収した! 同じ数、いや、その倍のゾンビで蹂躙してやる!」


「え、いやだけど。テイム」


「……なんじゃこりゃあ!」


リアクションが面白いなこの子。ちゃんと名乗りをあげるところとか、育ちが良さそうなのに。

さて、スケルトンと違ってゾンビは臭いからな、街での使い所は難しいだろうけど、たとえばゴーレムとかの嗅覚のなさそうなのと組ませて迷宮内の作業をさせるか。数万のゾンビを上手く活かしたい。

あ、そもそもコントロールできるのだろうか。


「召喚したゾンビって、どれくらい動かせるの? あと臭くないやつ作れない?」


「あたしを誰だと思ってるんだ? 魔道生物生成の大権威、ブーディ様だぞ! 臭くない魔道人形も作れるし、簡単な命令を聞かせる事もできるさ!」


「あれ、ゾンビ召喚じゃなくて魔道生物生成?」


「魔道生物生成って長いじゃん? ゾンビのほうが数つくれるし精神攻撃もできるから、ゾンビ召喚ってことにしてるのさ」


なるほどね。

臭くなく、そこそこ言うことを聞く魔道生物をつくりだせる、というなら迷宮じゃなくて街でも引く手数多だろう。スケルトンより力があって融通がきくなら、だけど。


さて、テイムは一回つかったが、四層もクリアしてしまった。

中途半端だからあと一回使ってしまいたいが、二回ないと五層の攻略は不安だ。


「どうしよっか」


「覗くだけ覗くっすか?」


「そうじゃな、五層の雰囲気だけでも見ておきたいじゃろ」


「いくのですよー」


さっと覗いてさっと帰るか。


この迷宮は、もちろん各層に地上へのポータルなんてない。ここから一層入口まで徒歩だ。

なので五層の入口のここから、また四層、三層と戻らねばならない。

と思っていたのだが。


「帰りポータルっすね、この色は」


「帰りポータル……?」


「ここから一層入口までの、片道っす」


「なるほどね」


片道ポータルなんてものが設置されていた。

これなら帰りは少し楽になるな。五層に降りておいてよかった。


さて、五層だが。


「暑いっす。最悪」


「これは溶岩かのう?」


「トンテンカンテンきこえるのです」


「鍛治の音かな? それに溶岩…… まさかドワーフとか?」


いや、ドワーフは魔物ではない。ドーグさんはテイム出来なかったし。

五層は溶岩の流れる火山地帯だった。

緩やかだが奥に向かって坂になっており、遠くには高い山が見える。


少しだけ先に歩くと、脇の方から犬のようななにかが数匹飛び出してきた。


「にんげんだ!」


「こんなところににんげん! ほんとににんげんかな?」


「ふくきてるからにんげんだよ!」


「まぞくかもしれないよ?」


「まぞくってなあに?」


「にんげんのかたちしたいきもの!」


「まぞくかな!」


う、うるせぇー…… でも敵対してこないな…… 近所の小学生に絡まれた気分だ。これはまさに、手も足も出ないってやつだな。

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