202話、ボスの息子
「ロマネコンティファミリアが、私たちになんの用?」
このサルファーとやらは、弱い。レティより弱いだろう。そんなのが一人、我々に接触しにきた。意図は?
「え、あ、ああ! いや、違うんですよ。私はファミリアの人間では無くてですね…… あれ、もしかして父となにか因縁がおありで? あちゃあ、マズったか」
苦虫を噛み潰したかのような顔をしている。
本当にただのナンパだったのか……?
「で、どういうこと? ただのナンパ?」
「ああ、まあ…… そちらのマリアさんに一目惚れした、というのが本当の所ですが。しかし、父となにかある人達なら…… あまり関わらない方がいいんでしょうねえ。いやぁ、運命というのはこうも残酷なのか」
うーん、この人の立ち位置がイマイチ掴めない。ファミリアではないが、ファミリアのボスである父親の関係者には近寄りたくないかのような。
「あなたはロマネコンティファミリアとどんな関係なの?」
「あー、えと…… 追放されたというか、放逐されたというか。ああ、あまり言わない方がいいのか」
でも親の名前は使えるし、町を普通に歩けると。
うーん、複雑な立ち位置なんだろうな。
「ロマネコンティファミリアとやらは、悪の組織では無かったかのう?」
「ああ、もしかしてパライバ様の関係者でしたか? あー、ならもっとダメだ。残念…… たしかに、大公様からすれば悪の代名詞みたいなものでしょうけど。国民からみれば、そんなに悪い事もないんですよ?」
「教会を乗っ取ったりしてるのに?」
「それはまあ…… でも、大公様の手の届かない慈善事業を行ったり、民の小さな悩みを解決したりと、意外に支持されているんです。……庇うような事言いましたけど、私はパライバ様側を応援して追放されたんですけどね」
親の組織に楯突いたわけか。思ったより気の強い男のようだ。ちょっと気に入ったぞ。
「ファミリアについて、もうちょっと聞かせて貰えたりしない? そこら辺の店にでも入ってさ」
「なのです」
「まあ…… いいか。話せる範囲でなら、お話しましょう。ただし、話せないことも多いですからね?」
それは仕方ない。命を賭けさせたい訳じゃないからな。
いろいろと話を聞いてみると、やっぱり壊滅はさせないほうが良さそうな感じだった。
国に根付いてるというか、国民に寄り添っているというか。大公家からするととてつもない敵なんだけど、民からすると居てくれて助かる組織。
「やっぱり乗っ取りが一番かな」
「ボスを支配すれば終わりなのです」
「そうじゃな、大公家への叛意を持たなければ問題無いじゃろう」
「あなたたち…… 何者なんです?」
「ただの旅人だよー」
「絶対嘘じゃないですか」
嘘でもない。本当でもないけどね。
まあ、この件はマリアに任せれば解決する事がわかった。楽な仕事だ。
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