201話、掘り出し物


露店を見て回る。

この辺りは、迷宮から出土したものを売っているようだ。

とはいえ、ギルドが買い取らなかった用途不明のものがほとんどなので、期待はできないらしい。が、私はそういうのに心惹かれるんだよな。


ただ回るだけの板、逆さにすると別の絵になる絵画、水をいれるとすぐに蒸発する壺…… いやこれは加湿器では? 買っておこう。

なにせいろいろある。面白そうなのは買って、お土産にする。


金があると、いくらでも使ってしまう。ほぼ全ての露店でなにかしらを買ったので、私は短時間でこの通りの人気者になってしまった。


「マジックバッグの姉ちゃん、これなんかどうだい!? 光る魚の模型!」


「マジックバッグの! これはオモチャだよ! ほら、ここを押すと水が飛び出る!」


「姉ちゃん、この鈍器なんかも面白くねぇか!?」


疑似餌に水鉄砲にフライパンじゃねぇか! 買います買います。

しかし、前世であったようなものも多いな。ほとんどがギリギリ使えるレベルのボロさだけど。

迷宮、前世と繋がってたりするのかな。


いろいろ買いまくり、さすがに離脱。

そろそろ夕方だ。集合場所に戻ろう。


と思ってたら、前方にマリアとムサシが。

なんだろう、なにかに絡まれている……?

近付いてみるか。





「お嬢さん、貴女こそが私のエンジェル! どうか、どうかこの手をおとりください!」


「やめんか! ワシの孫じゃ!」


「おお、お爺様! どうか、私に彼女との未来をお許しください!」


「ふざけんな! ぶったぎってやろうか!」


「おじいちゃん、落ち着くのです!」


「だがな、マリア……」


「マリアというお名前なのですね! なんとお美しいお名前! まさに貴女の美しさのためにあるお名前だ!」


「野郎ぶった斬ってやる!」


ナンパに絡まれてるんか? 害意があればムサシが即斬ってるだろうし、本当にまっとうなナンパか。まっとうなナンパってなんだよ。

うーん、助けに入るか……?


「どしたの、マリア、ムサシ」


「お、おお、タキナ。こやつがワシのマリアを……」


「お前のじゃねぇよ。マリア、大丈夫?」


「大丈夫なのです。この人、悪い人じゃないのですよ」


かばってる……わけではないな。事実を述べただけだ。マリアはこのお兄さんに興味が無いぞ。


「で、あなたは? どこのどなた?」


ナンパおにいさんに問う。軽薄な見た目だが、いい服を着ている。いいとこの人だろう。


「申し遅れました、私、サルファー・アーク・ペルギウスと申します。大公パライバ様の弟、アレキサンドラの長子です」


……わあ、急に重要人物が来た。しかも向こうから。なに? どういうこと?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る