194話、褒賞


「……美味い飯の情報は、詳しいものがいるからそいつを呼んで君たちに付けよう。禁足地の情報も、書庫からとってこよう。しかし、入る許可は、私には出せない。管轄が違うからな」


ま、最大限は願いが叶ったし、いいか。


「入り方は知ってるっすか?」


「……深夜にしか入れない、と聞いたことがある。入ったものは出てくることはなかったとも。入る資格などは、特段なさそうだが」


目を逸らしながら答えてくれる。……いい人じゃんね。

つまり、別に鍵とかはなく、深夜なら侵入できると。よし。


「誰が入ったかはわかるっすか?」


「頭の悪い冒険者が数人と、クスリで追放された司祭が入った記録がある。ま、どちらも消息不明だ」


ふむ。別段怪しくもない。

内部の魔物が強いから禁足とされているのか、宗教的な意味合いで禁足とされているのか、どちらもか、というのはあるが。


「無断で入って、罰則はあるっすか?」


「一応、三日間の投獄と尋問、という事にはなっている。やったことは無いがね」


じゃ、入って用が済んだら、捕まる前におさらばしたほうがいいのかな。


「なんで禁足地なんすか?」


「まず、内部の情報が少なすぎる事。一層目から、他の迷宮のボスレベルの危険な魔物が彷徨いている事。五つの禁足地すべてが洞窟型ではなくフィールド型である事…… ま、いろいろだ」


「その情報はどこからっすか?」


「歴代の大公たちが、文字通り決死の覚悟で集めたのだ」


「なるほどっす」


めちゃくちゃ高くつく情報を得られた。

これだけでも、息女を助けた甲斐があったな。


「……入るのだな」


「用があるんすよ」


「うむ…… 大公家は、それを聞かなかった事にしよう。城に呼んだのは、娘を助けられた礼をするため、それだけだ。もし禁足地に侵入し、無事に出られた場合は…… そうだな、大公家が責任をもって尋問をする、という事にしよう。それでどうだ?」


つまり、入るのは見ないふりしてくれると。出れたら、内部の情報と引き換えに見逃してやると。そういう事だな。


「タキナ、いいっすか?」


「うん、いいよ。あ、あと、ロマネコンティファミリアについて知りたい」


「らしいっす。どうっすかね」


ロマネコンティファミリアの名前を出した途端、パライバさんは露骨に渋い顔をした。……めちゃくちゃ嫌そう。


「あまり、関わらない方がいい」


「戦闘員を倒したんすけど」


パライバさんがウェルさんを見る。ウェルが頷くと、更に渋い顔になった。


「……ロマネコンティファミリアに狙われて、尚も我が娘が五体満足で生きているのが本当に嬉しく思う。……出来ることなら、あやつらは大公家の威信にかけて叩き潰してやりたいが……」


「零番隊が為す術なかったわけっすからね。……どこの輩っすか」


騎士がほぼ一方的にやられてたわけだ。いくらなんでも強すぎるよな。


「あれは…… ロマネコンティファミリアは、私の弟の組織だ。アイツの狙いは、この椅子だ」


ははん、権力闘争てやつだな?

なんか面白くなってきたし、首突っ込みまくろう。

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