195話、マフィアについて


「あいつらは、聖教区画を牛耳っている。ユリス教の神殿や住居が並ぶエリアだが、いまや殆どがロマネコンティファミリアの支配下だ」


すげー罰当たり! やるな、ロマネコンティファミリア。


「ユリス教徒はどうしてんすか?」


「国から出るか、他所へ引っ越すか、ロマネコンティファミリアの庇護下に入るか、だな。厄介なことに、そこそこの数が傘下にある」


その傘下の神殿でのお布施とかの一部がロマネコンティファミリアに上納されるのだろう。


「それに、冒険者もロマネコンティファミリアの傘下が多い。あいつらの中に、武器へのエンチャントが出来るものがいるらしい。それで冒険者を強化し、対価と支持を得ていると」


結構マジで国に根付いてるな。あくどい事はしつつ、しかしこの迷宮都市の最大勢力である冒険者たちは敵にせず、仲間に引きずり込んで勢力を増していく。

やり方がマフィアのそれだ。


「聖教区画を吹っ飛ばすのはどうっすか?」


「さすがにそれは…… 罪のない者もいる。罪があっても、償える者もいるのでな……」


じゃ、やっぱり暗殺しかないかな。


「潰していい人を教えて欲しいな」


「トップである、私の弟、アレキサンドラ。そして幹部が六人。これらは、捕まれば死刑が確定している。デッドオアアライブというやつだ」


なるほど、よし。


「マリア、やってみる?」


「いいのです?」


「楽しそうだし、いいよ」


「やるのです。おじいちゃん借りるのです」


「お、ワシもか」


よし、私は特等席で経過を知る遊びをしよう。


「いったい何を言っているんだ? まさか、その小さな子と、年寄りを囮に……」


言い切る前に、ムサシがパライバさんに一瞬だけ殺気を飛ばした。ウェルさんが剣を抜いたぞ…… よく反応したな。


「年寄りでも、お主らよりは強いわい」


「……すまない、そのようだ。しかし、そちらの少女は……うっ」


マリアもムサシの真似しちゃった。ウェルさん困ってるぞ。


「暗躍は、この中では私が一番向いてるのです!」


それはほんとにそう。なんてったって吸血鬼。霧に影に闇に、だからな。


「見た目で判断したことは詫びよう。……我々からの依頼、という事には出来ないが、討伐の証拠があれば国として褒賞は出す。頼んでもいいか?」


「いいのです! 乗っ取ってくるのです!」


あ、そっちのほうが面白いか。

マフィアを乗っ取って、使いやすいコマにしてパライバさんに渡そう。


「楽しみになってきたねえ」


「そうっすねぇ」


「……あなた方は、恐れというものを知らないのだろうか」


恐れ、ね。畏れられる立場になるわけだし……

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