192話、大公令嬢
「あらためてありがとう。私はウェル。ペルギウス騎士団の零番隊長だ」
ぜろばん!? かっこよすぎ。なにそれ。
ペルギウスってことは、公国の人か。
「私はヒナ。特級の…… 『重剣のヒナ』っす。わかるっすかね」
えなに、重剣? 二つ名!? 初めて聞いたんだけど。かっけー……
「おお! 重剣のヒナ様! お噂はかねがね。いやあ、そんな素晴らしい方にお助けいただけるとは、私たちも運が良い。そうだ、姫様は特級冒険者様方にご興味がある方でございます、よければ、目覚めた折にはお話をきかせてあげてほしく」
「いいっすよー。とりあえず、目覚めるのをゆっくり待つっすかね。急ぐこともないっすし」
ということで、軽休憩だ。
軽くなにか用意して食べよう。
次々と、人が目覚めてくる。
やはりまずは騎士たちの目覚めが早い。鍛えられているのだろう。しかし、じゃあ盗賊はもっと強かったんだよな。そんなのに狙われる姫って、大変だなあ。
しばらくゆっくりして、全員が目覚めた。
「姫、なんともございませんか」
ウェルさんが優しく話しかける。なんというか、妹のようにというか、娘のようにというか。優しい。
「ウェル、ここは……?」
「帰路の途中でございます」
「……盗賊の塒ではないということは、助かったのですか?」
「ええ、助けていただきました」
「では、その方に礼を言わないと……」
「動けますか?」
「ええ、大丈夫。体はなんともないわ。少しダルいくらい」
「お手を」
ウェルに連れられ、姫様がこちらへくる。
我々はそれぞれなにかをしていた手を止め、向き合う。
「こちらが、我々を救助してくださった方々でございます。皆様、こちらが我が主、ペルギウス公爵家の」
「自己紹介は私が。皆様、私はペルギウス大公の長女、ファイラです。この度は我々をお助け頂いたとのこと、感謝の念に耐えません。この事は我が父にお伝えし、あなた方には相応の報奨を贈らせていただきます」
「あー、私はタキナ。一応、このパーティのリーダーです。報奨とかそういう交渉は、こちらのヒナに任せておりますので、その辺はこの子とおねがいします」
「っす。重剣のヒナっす」
ヒナがそう言った瞬間、少し硬かったファイラの顔が、ぱぁ、っと明るく…… 興奮した顔になった。
「ヒナ様って、あの特級のヒナ様ですか!? わあ、なんという…… 会いたかったのです、重剣のヒナ様! 細く柔軟な体でありながら力自慢でも持つのがやっとの大剣を軽々と振り回すその威容、ああ、戦っている所もみたかった! け、剣を見せていただいてもよろしくて?」
「いっすよ? タキナ、出してほしいっす」
無限庫に閉まっておいた『死を切り裂く者』を取り出す。おっと、高さを誤って砂埃が。
それをヒナが軽々と片手で持ち上げる。
「これが今の剣っす。かっこいいでしょ」
「わあ、美しい! こういうものに疎い私でも、とてつもない力を感じます! も、持ってみてもよろしいですか……?」
「じゃ、置いとくっすね。全員、試してもいっすよ?」
そう言うと、後ろでそわそわしていた騎士たちもガヤガヤと近付いてきた。
まずは姫様が持ち上げようとするが…… まあ、当然一ミリも浮かない。
「お、重すぎません!?」
「私が持ち上げて見せましょう」
お、ウェルさん。……おお、数センチあがった! すごいね。
「かはっ、はぁ……はぁ…… お、重い…… ど、どれだけの力があればこれを……振り回せ……」
「ウェルさん、はい、水」
「ありがとう、ございます…… いやはや、特級冒険者はとんでもないですな……」
そうなんだよね、実はめちゃくちゃ強いんだよね、ヒナは。
うちではちょっと、周りが人外すぎて影が薄いけど……
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