175話、勇者、旅に出るってよ


88日目、昼。

今日のテイムはどうするか。

昨日はカークスをテイムした。手元には居ないけど。

遠出の帰りだから、あんまり遠くには行きたくないんだよなあ。


「城でいいか」


じゃ、城いこ。





城に入ったら、丁度勇者パーティが城から出るところだった。


「あら、こんにちは」


「ああ、タキナさん、こんにちは。俺たち、今日から数日、王国に戻りますね」


「急だね?」


びっくりした。なんかあったんかな?


「勇者パーティに必須の装備をひとつ、まだ入手できてないんです。聖剣、聖鎧、聖杖は手に入れてるんですけど、深淵魔導書っていうのがまだ無くて。それを探すため、まずは王国の書庫を漁って情報を集めようかなと」


なるほどなるほど。最強武器がひとつ足りないのね。


「そういうことなら、これあげる。ふたつしかないけど」


勇者イサムに、スキルオーブをふたつ渡す。


「これは…… 速読ですか。わあ、助かります! これならめちゃくちゃ時短になりそう」


「タキナさん、ありがとうございます! 使うのは、私とマナでいいよね、二人とも?」


聖女アヤがそういう。アヤとマナは読書好きなのかな?


「そうだな、アヤもマナも、本で戦うもんな。俺はそれでいいよ」


「わ、私もいいですよ…… 本は読まないし……」


聖女も本で戦うのか。マナさんは魔導書を音読したら魔法の威力があがる、ってのは聞いたけど。

杖と本で役割が違ったりするのかな。


「気をつけるんだよ。ああ、魔物も貸そうか?」


「あ、いえ…… ああ、じゃあ、メタスラちゃんだけ、一体貸しといてくれますか? あの子便利すぎて」


気持ちはわかる。ゴミの処理も、雑魚魔物の処分も、ちょっとした生活の補助としても優秀すぎて。

国民全員に配りたいくらい優秀なんだよな。簡単に増やせないかなあ。


「ま、気をつけて。ああ、そうだ、ゴールドさんとこいくなら、このお酒も届けといてくれる?」


この前の宝物庫から得た酒瓶を数本渡す。

ただの土産だ。深い意味はない。強いて言うなら、ここで誰かに飲ませるよりはゴールドのほうが有効活用しそうだよな、と思っただけだ。


「確かに預かりました。では、また戻ってきます」


「ん、行ってらっしゃい」


四人に手を振り見送る。まあ、そのうち帰ってくるし。イサムはめちゃくちゃ強くなったし、メタスラちゃんもついてるし、心配はしてない。


さて、城の地下二階。

本来の目的を果たそうか。


「みーんな強そうだけど…… いい子いるかなぁ」


前回は大蛇をテイムして生成して食べて、探査系の能力をもらった。

欲しい能力、なにかあるかな。


「分裂とか、複製体をつくるとか、そういうの居ないかな」


スライムがそうだと思ってたけど、この世界のスライムは分裂しないんだよな。合体はたまにするけど。


「ん、この子は……?」


この子、分裂しそう。そんな気がする。

見た目はアレだけど……まあいいや。


「テイム! よろしくね」

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