174話、燃えてる?


88日目。

結局、メイドは十人預かることになった。

名目上は、レギオンの分体のお世話係。

うちに若い女の子が増えたら、希望者の教育もお願いする事になる。ロミオのメイドもいるけど、別の国のやり方も知ってるほうがいいだろう。

子供たちの中に、何人かそういう道を選びそうな子もいるし。進める道は多い方がいい。大人が道を増やしてあげるべきだ。


「じゃ、かえりますかね」


「先に帰ってていいよ。私はメイドを連れてゆっくり戻るさ」


「背中乗らなくていいの?」


「乗らないよ」


そっか……




クジラを生成、こっちのレギオン本体に従うように言って、それから帰り道。

地獄迷宮に戻り、それから私の街に戻る。


街の、城壁が見えてきた。


……あれ?


燃えてる?


街の前にゼストがいる。


「タキナ、帰ったか」


「ゼスト! これ、あれ、あの、」


「おちつけ、大丈夫だ。負傷者ゼロ、死者もゼロ。お前の魔物も被害無し。問題ない」


「え、じゃなにこれ!」


街が燃えてる!


「よくみろ、街じゃない」


「えっ」


よく見る。街が…… いや、街の、手前。城壁の手前か。燃え盛る炎が高く蠢いている。

……あれは燃える魔物? 動いていない?


「襲撃が今終わったところだ。火属性の魔物が多かったんだよ。一応、壁付近の住民の避難はしてあるし、消火の準備もさせた。今はスラちゃん待ちだ」


ああ、スラちゃんなら消火もすぐできるか。

なるほど、焦った。マジで焦った。めちゃくちゃ燃え盛ってるからさ……


「いやぁ、よかったよかった」


「ちょっと厄介なのもいたから、俺が出たんだがな。ま、問題ない」


え、ゼストが出なきゃいけないような魔物ってやばすぎない?




しばらくしたら、スラちゃんが来て消火してくれた。

スラちゃんは別の場所の襲撃を処理していたようだ。今日は多かったんだな。


「さて、残りは指輪に食べさせて、と。一日空けたけど、大丈夫だった?」


「ああ。なにかあったとすればこの襲撃だけだな」


「そか、被害がないなら良かった」


損害といえば城壁に煤がついたくらいだ。これくらいならスケルトン清掃部隊がなんとかしてくれる。


「そっちは片付いたのか?」


ゼストに、魔大陸でのいろいろを説明する。


「タンタロスの病…… 水を求める…… 水を怖がるようになる病は知っているが、その逆は知らないな。渇き、枯れ…… 変な薬でも飲んだか? だが、魔王ならそんな事もありえないか」


結局、ゼストにも病気の事はわからず。ヘパイストスがなんとかできたらいいんだけどね。ちょっとだけ心配だ。

厄介な事にならなきゃいいけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る