173話、魔大陸の食事


ネスンスやらタンタロスやらヘパイストスやらの話がようやく片付いて、夜になってしまった。


今夜は魔大陸で過ごす事になった。

レギオンが城に泊めてくれるそうだ。王城に泊まるのは初めてか? ゼストの城は王城判定じゃないだろうか。


「魔大陸の王の名にかけて、盛大に歓待しよう。……と思ったんだけど、実際どうなんだい?」


「少人数でゆっくり食べたいです」


「だろうね。私とサシで食べるか。もちろん、食事には期待してくれていいよ。タキナちゃんの所ほどじゃないけどね」


楽しみだ。魔族って何食べるんだろう? うちの魔族は…… みんな何が好きなんだろう。今度聞き取り調査してみようかな。





というわけで、魔大陸、レギオン魔王国、王都、王城にお邪魔している。

レギオンのダイニングホールに、私とレギオンが座っている。

レギオンの横には、強そうなおじ様が立っている。執事だろう。

私たちの周りには、幾人のメイド達。給仕をしてくれる。なにかあったらなんでも言えと言われたので、とりあえず私の国に来ないか勧誘した。レギオンにマジでやめてくれって言われた。ごめん。

皿がいくつも並べられ、食事の準備が整う。

そういえば、マナーとか……


「マナーは気にしなくていいよ。一応、そういうのも無くは無いけどね」


たすかる。最低限、前世の記憶にある程度のマナーはやらせてもらうけど。


並べられていく皿は、ひとつひとつは小さく、量が少ない。少ないと言っても、一口サイズとかではなく、子供用くらいのサイズだ。

色んな料理を沢山楽しむ感じだな。魔大陸の料理は知らないので嬉しい。

あれ、でもこれって……


「中華……?」


「なんだ、日本とやらにもある料理なのかい?」


「あ、いや、ちょっと違うけど、雰囲気というかそういうのが似てて」


油と香辛料の匂い。キツくはなく、上品に纏められているが…… 例えばこの皿。小籠包では? こっちは油淋鶏。 こっちは北京ダックみたいな。

当然、見たこともない料理もあるが、基礎は同じなのだろう、多分。


「じゃ、食べてくれ」


「いただきます」


ひとつずつ食べていく。

うん、やっぱり中華の味だ。私の知ってる大雑把な味じゃないけど、なんというか、高級中華って感じ。

あ、フカヒレスープみたいなのがめちゃくちゃ美味しいぞ。


「そちらはナインヘッドシャークのヒレを五十種の野菜と香辛料で煮込んだスープでございます」


なにも言ってないのに執事さんが教えてくれた。私が気になってるのを察してか。優秀だねえ。


「執事さん、私の国に来ます?」


「やめてくれないかタキナちゃん。メイドなら一人くらいくれてやってもいいけどさ」


え、いいの? やった。どのメイドにするか食べながら考えよ。

……怯えなくていいよ、メイドちゃんたち。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る