170話、原因発見
「他所の魔王が、私の国になんの用だい?」
レギオンが、少し威圧をこめて質問する。
宿の主人は反応してないので、このネスンスにのみ当てているのだろう。器用だな。
「我らの大陸は、現在干ばつで疲弊状態。さらにそこに魔物の襲撃が頻発し、まさに瀕死の状況なのだ。そこで、協力を求めるため、この国に来たのだが…… どうやら、こちらも干ばつの前兆が起きているらしい。なにか、手伝えることがあれば手伝おう。見返りとして、こちらへの協力も約束してもらいたいが」
原因、この人じゃないっぽい? なんか話が大きくなってきたな。
隣の大陸でも干ばつ、こっちでも干ばつなりかけ。
やっぱり魔物かなぁ。
「アンタが原因じゃないって証拠は?」
たしかにそうだ。
「私の能力は、水の追跡と操作。たしかに干ばつを起こすことはできるが……それなら、私が貴女の前にいる意味はないだろう」
「ま、それもそうか。ひとまず信じよう」
わざわざ喧嘩しに来る必要もないよね、たしかに。
しかし、これでは振り出しか。
原因はわからず、被害は想定より大きかったのがわかっただけ。
「実は、この国の水の調査をした結果、干ばつの原因がわかったのだ」
「ほう」
お、進捗有りか。
「原因は、魔王タンタロス。私と同じ水の系譜で、体を液状化して形をかえられる能力をもっている。巨大化、小型化も自在。どこかの諸島を根城にしていたはずだが…… どうやら現在は自失しているらしい。私のいた大陸でもここでも、水を求めては奪ってまわっているようだ」
まーた新しい魔王! どれだけ魔王いるのよ。勇者はなにしてるの。……勇者は街で大魔王と特訓中だわ。
「つまり、その魔王をどうにかすれば、そっちもこっちも解決って事かい」
「問題の原因は解消される、と言ったところだろう。しかし、居場所がいまいちわからない。小型化されては見つけようがないからな。大型化してくれれば……」
と、外から騒ぎ声がきこえる。
……なんか暗くない?
「噂をすればというやつかい。タキナちゃん、でるよ!」
「あ、そっか、はい!」
そうか、そのタンタロスが出たんだ、多分。
外に出た。
太陽が遮られていて暗い。
空には、巨大な水のクジラ。いやデカイな。
「討伐ですか?」
「そうしたいが、ここでやるとあの水が全部降ってくるかもしれない。そうなると町は終わりだ。……どうするか」
たしかにあれが全部水なら大変だ。
さて、どうするか……
「私に任せてほしい。あれだけの水分量があるなら、私の操作も多少通るだろう。行先を変えるくらいはできる。どこに向かわせればいい?」
おお、水操作か。便利だな。私も欲しい。
「とりあえず、町から離せたらなんとかしてくれるさ!」
「わかった。誰か当てはあるのか」
「タキナちゃん、任せたよ」
「えっ」
あ、私!?
……ああ、まあ、どうにかなるか。
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