169話、聞き取り調査


大蛇のもっていたスキルを試してみよう。

まず、この村にはその巨大ななにかが通り過ぎていった痕跡が残っている。たとえ空を通過しただけだとしても、だ。

スキル、痕跡探知。そして追跡。


「えっと……あっちのほうに向かって、それから……あっちに方向転換したのかな」


「なるほど…… 王都側か」


「レギオンさんの本体のいる所?」


「そうなるな。本体側に何も起こっていないということは、王都にはまだ着いてないのだろうさ。先回りしようか、タキナちゃん」


「私は走りますけど、道案内いけます?」


「背中に乗せてもらえるかい?」


おんぶして走るのか。いけるかな。





「二度と乗らない」


「ひ、ヒール。いけます?」


「鬼畜かい?」


どうやら背中に人を乗せるのは危ないようだ。酔い止めとかないのかな。

さておき、王都の手前の宿場町までついた。

痕跡はこの辺りだ。というかこの町で途絶えている。つまりこの町にいる、はずなんだけど、どう見てもでかい島のようなサイズのものは見当たらない。


「聞き込みですかね」


「も、もう少し休ませてほしいんだけどね」


レギオンは乗り物酔いに弱い。酒には強いのに。


聞き込みをしていくと、この町には大きなものは飛来していないようだ。

レギオンは、最近来た魔族はいないか聞いて回っている。宿場町だから来客は沢山いるだろうが、怪しそうなやつは目立つのでそこから当たるようだ。


しばらくの聞き込みの後、怪しそうな人物が浮かんだ。

ボロボロの状態で町にきて、門番に水を求め、井戸のある宿に滞在しているらしい。

干ばつの原因、それがいるらしき町に、水を求める魔族。怪しいといえば怪しい。しかし、干ばつなのだから水を求めるのもわかる。どうだろうな。

とりあえず、ほかの手がかりは少ないということで、その魔族に会いに行くことにした。



宿場町で一番安い宿、『ゴブリンの巣穴』。

名前からして安さで売ってるのがわかる。潔すぎる。

この宿の売りは、安さと、庭にある井戸。水だけは使い放題なので、金は無くても水浴びができる。

ちなみに井戸は住民にも解放されている。


「王様ァ!? こんな宿に、よくおこしいただきまして! へぇ、なんの御用でございましょうか!」


小太りの魔族が、レギオンを迎える。この人は宿の主人らしい。


「ここに滞在しているヤツに用があるんだが」


「へえ、ここに滞在しているのは……台帳によると、今は一人だけでございやす。連れてきましょうかい?」


「そうだな。ここで待ってていいか?」


「お席の方におねがいしまさぁ! 王様を立たせたままだなんてさすがに良くねぇでさぁ!」


ということで、小さいが飯を食えるくらいのスペースにある椅子に座って待ってる事にする。

さて、どんな人だろうな、渇きの人。


「連れてきました! こいつが一昨日来た旅人でさぁ。ずうっと井戸で水を飲んでる変なやつですが、部屋は汚さないんでいい客ですよ」


「ああ、連れてきてくれてありがとう。……さて、アンタには聞きたいことがいくつかある。名前から、聞かせてくれるかい?」


宿の主人に連れてこられたのは、くすんだ金髪、ボロの服を着た、女。身なりは悪いが、姿勢はいい。


「私はネスンス。この国の王に助けを求めるべく、別の大陸からやってきた魔王だ。よろしくたのむ」


魔王ネスンス。

……おそらく、この人が異常事態の原因だろう。

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