162話、地獄迷宮二十層


85日目。

今日はゼストの城にて、勇者パーティ四人と、アリス、ロミオ、マリア、ベルゼ、ゼストとともに食事をした。

今朝は和食だ。お味噌汁が沁みる。アヤちゃんとリンちゃんは、イサムと同じく泣いていた。わかるよ。


ゼストの観測によって、エリスのいる神域はほぼ特定できたらしい。どうやったのかはわからないけど助かる。

というわけで、その神域への鍵となるものを、地獄迷宮の二十層で確保するため、今日は地獄迷宮に向かうことにする。

強い魔物が配備されているだろう、ということだ。テイムして終わりだろうけど。


「暇なんでついてっていいっすかね?」


との事なので、ヒナも連れていく。

お弁当ももった。牛タン弁当だ。お昼が楽しみすぎる。

ちなみに、勇者パーティは今日は休養、ついでに街の観光。

マリアはアリスとおでかけ、ベルゼ、ロミオはいつも通り内政のお仕事、ゼストはエリスのいる神域について調べるという。

最近はロミオの騎士とヴァンの配下の戦士たちが子供たちに武芸を教えているので、ヒナの出番は少ないようだ。





地獄迷宮、十九層に到着。

ここから、ひとつ下に降りる。


相変わらずハイテクなよくわからない階層だ。

機械生命体みたいなこいつら、倒してもスクラップになるだけで特に街のためになりそうな感じはしない。魔物を配置して狩るのはやめておこう。

そのうちハヤトに来てもらって、詳しくみてもらおうかな。


地獄迷宮二十層へ降りる。

二十層は、神殿や教会のような雰囲気だ。

ステンドグラスが綺麗。

中央奥に、エリスを象ったであろう石像が置かれてある。めちゃくちゃ美人さんだな。……胸部装甲は薄いが。


その像の手前。

石像のある所からこちら側に、数段の段差があり、その段差の手前に、魔物が鎮座している。


見た目は、人だ。

腰に刀をさし、頭髪は髷。服は和装。胡座をかいている。

見た目は、完全に、人間。

しかし、雰囲気は魔物。


「来よったか」


「あ、喋るんだ」


「え、アレが魔物っすか? 変な格好の人にしか見えないっすね」


変な……そうか、こっちの人からすれば変な格好かもしれんか。


「我が名はムサシ。侍じゃ」


ムサシ。宮本武蔵か? 最強の侍と言われている。

しかし、勇者でも魔王でもなく、魔物とは。


「私はタキナ。元日本人、今はアグニ王国の王をしてます」


「あ、私はヒナっす。猫獣人っす」


「にほん……ニッポンからの転生者か。これも、何かの縁かのう。本音を言えば、語り合いたいところなのだが。……いざ、尋常に」


「テイム」


「…………お主、侍の誇りをなんだと思ってるんじゃ?」


だって、刀で斬られるの怖いもん。

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