161話、勇者パーティ


84日目、昼過ぎ。

地獄迷宮から帰ってくるのが早かったので、少しだけ遅めのお昼ご飯を済ませた。

お弁当をつくってくれていたものを、大きな木の下でマリアと食べた。プチピクニックだ。


「おむすびなのです」


「おむすびとおにぎり、なにが違うんだろうね。この国ではおむすびって呼ぶ事にしようかな」


「言葉狩りはよくないのです」


そうなのか。そうかもしれないな。


私のおにぎりには、ツナマヨが入っていた。

マリアのおにぎりには栗が入っている。美味しいのか? ……栗ご飯みたいなものか、それなら美味しいな。




さて、勇者イサムはまだ帰ってこない。

今のうちに、今日の魔物生成をどうするか考えよう。


候補としては、食べる前提であれば、セイント・エルダー・リッチで回復手段獲得か、エロウゴブリンで直接物理攻撃以外を無効化するか、ブラッディドラゴンで血液操作を獲得するか…… いや、血液操作は必要ないか? そのうちでいいか。


回復は、私自身には必要ないだろうが、仲間たちや街の人々には使えるだろう。セチも最近は暇してるけど、仕事がないわけではないし。


というわけで、セイント・エルダー・リッチを生成。そしてぱくり。


「うん、回復魔法獲得。……あと、あー、これは要らんかったな」


他の能力として、心臓を止められるようになった。必要なさすぎる。意味ある?


さっそく、イサムたちが帰ってきたら実験台になってもらおうかな。





夜。

夜ご飯の用意をしていたころ、ようやく勇者イサムが帰ってきた。


「勇者ライトの討伐、終わらせてきました」


ん……なんかかっこいい顔してる。覚悟を決めた人の顔だ。


勇者ライトを討伐、聖女アヤを救出し、聖騎士リンの病も治して帰ってきた。現状誰も傷が残ってないので私の実験台にはならない。残念だ。


「あらためて。こっちの大きいのが聖騎士のリン。こっちの小さいのが聖女のアヤ。……ふたりとも、こちらの方は、この国の王、そして俺たちと一緒に転移させられた元日本人、タキナさんだ」


「よ、よろしくお願いします……」


「よろしくお願いします! タキナさん、イサムはご迷惑をおかけしてないですか?」


「ちょ、アヤ、やめてくれ」


体躯と胸部装甲のデカい、タンク向きの子が、声と感情をとりもどした聖騎士のリンちゃん。

体も胸部装甲も小さいちんまりした元気な子が、聖女のアヤちゃん、ね。


「よろしくね、リンちゃん、アヤちゃん。……イサムはこの国でも結構役に立ってくれてるよ」


「そうなんですね! よかった。私達も、この国に滞在させていただけると伺ってます! 出来ることはなんでもしますので、なんでも任せてください!」


アヤちゃん、しっかりしたいい子だなぁ。

しかし、やることあんまりないんだよな。とりあえず、街の案内をしてから考えよう。

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