155話、子と曾孫


どうやら、ハイランドの勇者ライト討伐にはイサムが、地獄迷宮の魔王カオス討伐には私がいく、という話らしい。同時侵攻作戦だ。それはそれで楽しいな。


「カオスとライトをエリスの下から排除すれば、それぞれに与えているエリスの力が主の元に戻ろうとするだろう。それらを辿れば、ほぼ確実にエリスの居場所を探り当てることができる」


さ、三角測量!?


「三角測量みたいね……」


マナさんもそう思いますよね!? まさかこの歳で、こっちの世界で使うことになるとは思わなかったな。


「配下を倒して、逃げれることはないんですか?」


「うむ、神の本体は簡単には移動できない。神域に居なければ、神の力を保てないからな。特に、現在のあヤツらは神性の維持に必死だろう」


限界が近い、って事かな。もし二人の限界がきたら、この世界はどうなるんだろう。


「タキナは、魔王カオスを討伐し、最下層で鍵を入手し、それからエリスを討伐する。エリスが消滅すれば、その余波でユリスの居場所も割れるだろう。ユリスは、イサムとそのパーティの四人で討伐する。これで、エリスとユリスから、神の証を奪えるだろう」


道順が示された。

とにかく、私は魔王カオスを倒し、地獄迷宮をクリアし、エリスを食う。それだけだ。


「神の証を吾輩に返還してくれたならば、あとは……タキナ、イサム、ゼスト、マリア。四人に、神の証を分け与えよう」


さて、やっと本題だ。




ラプラスが、ゼストとマリアにあらましを説明する。

ゼストは親に。マリアは曾お祖父さんに会っているわけだな。


「つまり……俺は訳あって捨てられたということか」


「申し開きのしようもない。全ては今のため。それだけは信じてほしい」


「……今更、捨てられたのはどうとも思わない。おかげでタキナに会えたからな」


キュン…… イケメンすぎる、ゼスト。私も会えてよかった。


「ひいおじいさまなのです?」


「わ、吾輩がひいおじいさま……だと……なんと甘美な響き……」


堕ちてんじゃねぇよ精霊王。気持ちはわかるが、マリアは私のだぞ。


「で、俺と、マリアも神になるのか。神になったら不自由になる、っていうなら俺はやりたくねぇんだが」


たしかにそれはそう。私も自由にやりたいな……


「それに関しては…… うむ、本来、神とは神域に居るもの。神域から出ることもできるし、活動もできるが、神域外では神の力を発揮できないからな。そこで、四人が神になることを請け負ってくれた場合、吾輩の力で、アグニ王国の全域を神域とすることもできる。どうだろうか」


どうだろうか、と言われても。


「神域になったからといって、他の者が住めなくなるわけではない。むしろ、君たちの神性で護られるため、今より安全になるだろうよ」


「それならいいか」


「いいのですよ」


ええんかい。軽いな。

まあ、今とやることはあまりかわらないんだったら、いいだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る