154話、神剣
「ヘリオスからはどう聞いている?」
「霊峰の真の主の心臓を貫け、と」
「ふむ……ほとんどあってるな。では、はじめるか」
はじめるって、今から心臓貫くの!?
「吾輩の体には、この世界にはない物質が血のように流れていてな。それが付与されたものは、神性を持つものに対しての干渉を可能にする。そして吾輩は不死不滅の存在。その聖剣で我が心臓を貫き、聖剣に我が血を吸わせるのだ」
なるほど、不死不滅なら問題ないか。問題ないのか? ビジュアル的にちょっと不安だが。
ま、やるのはイサムだ。
「では、失礼します」
「うむ。一思いに済ますが良い」
ぶすり、と、聖剣が精霊王ラプラスの胸に突き刺さる。血は出ない。が、聖剣が光り始めた。これで、神にたいして攻撃が通るようになるのか。帰ったら私の血も渡さないとな。
「よし。これでこの聖剣は、神に干渉できるようになった。……あとは神性の付与だが、それはどう聞いた?」
「それは、タキナさんの血をわけてもらえ、と」
「ふむ……まあ、足りないことはないだろう。そう、だな…… この後の話にも繋がるが、ゼストとマリアの血も少しわけてもらうと良いだろう。三人分の神性であれば、ユリスとも渡り合えるだろう」
そうか、今の神の姉妹であるゼストにも、姉妹の子孫であるマリアにも、神性はあるんだな。隠れているのか、少ないのか、私には気づけなかったが。
どうせなら今のうちに、ということで、三人の血を少しだけ聖剣にわけあたえた。ほんの少しでいいというので、それぞれの指に針を刺して血を出した。針はどこにって? 私、メタルスライムになれるの。ってね。
「ギラギラなのです」
「しばらくすれば光りはおさまるだろう。おさまるまでは、イサム、君が制御をしてみるがいい」
「はい! ち、力の流れが激しくて、体がもっていかれそう……!」
「ふんばるのよ、イサム」
神剣の件については、これでいいだろう。
さて、あとの話だ。
……まず、ラプラスの後ろで黙って動かない、リンさんの話をしたいな。
「その人は、リンさんで間違いない?」
「そうね……リン、無事でよかった」
リンさんは、こくり、とだけ頷いた。
……無口なキャラなのか?
「聖騎士リンは、事故により、声と、感情を欠落させた。おそらく、ユリスが君たちを世界樹の杖の迷宮から転移させた時に、座標がズレたのだろう。だが、世界樹の杖をもった聖女の奇跡であれば、これは治せる。安心するといい」
ほお、よかった。このままだとちょっと、ユリスも食べちゃわないといけなくなるところだったが。
「で、その聖女様はどこに?」
私がラプラスにきいてやろう。イサムはまだ制御に必死、マナはちょっとショックで声が出ていない。治ると言ったから、すぐに立ち直るだろうけど。
「聖女アヤは、ハイランドにいる。勇者ライトに従うふりをしながら、君たちの前に立ち塞がる、ふりをするだろう。その演技に乗り、油断した勇者ライトを討つのだ」
なるほどなるほど。そういう展開ね?
わくわくしてきた。
「ハイランドには、イサムとマナ、リンの三人で行くといい。神剣をもったイサムと、その補佐が二人いれば余裕があるはずだ」
え、私の出番、ないの!?
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