111話、魔物使い


鬼人族、魔物使い、魔王カオスの配下の、アデク。

配下というが、立場としては副官らしい。お偉いさんじゃん。

彼は、囚われた魔王カオスを救うため、勇者ライトと邪神エリスから逃げたという。


「エリス、か。しかし、よく逃げてこられたな? 」


「俺の魔物に、完全探知不可のスキルをもったスライムがいるんです。その子で全身を覆って、なんとか監視網から抜け出して……他の子たちは外界で待機させていた子たちです」


完全探知不可のスライム…………!?

え、ほしい。でも多分、スラちゃんたちが体内情報の交換が出来るのは、私がテイムしてるからなんだよな。くそう、自分で探すしかないか。……探知不可なら無理では?


「抜け出す前に、この国は街ひとつでエリスの癇癪を何度も耐えていると情報を得たのです。なので、ここならなにか出来るのではないかと」


エリスの癇癪……あの馬鹿みたいな襲撃は、戦闘ではなく、癇癪か。だからあんなにお粗末なのね。

そのお粗末な癇癪で、世界がやばいんだけど。


「それで、貴方が敵ではないという証拠は? 」


ベルゼが、強めの口調で詰める。

弱い相手なら、多分コレだけで気を失うだろうな。圧がすごい。


「おそらく、そちら側には魔王級の魔族がいるでしょう。なら、証明は簡単ではないですか? 私を、配下にしていただきたい」


「……カオスの配下でなくてもいいと? 」


「あの方を救えるのであれば、私は人間の靴でも舐めましょう」


覚悟ガンギマリじゃん。こういう人が一番こわい。

そして、こういう人が一番、わかりやすい。


「ゼストさん、お願いしていい? 」


「お前がいいならいいが。大丈夫か? 」


大丈夫かと言われても、大丈夫じゃない理由が見当たらない。

住民は何人増えてもいいもんだ。それに、どうせ世界平和のために動かなきゃいけないし。街を守るためにね。


「……よし、なら俺の配下として置く事にしよう。タキナ、コイツの仕事を考えとけ」


「感謝いたします……!」


新しい住民、ゲットだぜ。


とりあえず、控えてる魔物たちは私の子たちのところに住んでもらって。アデクはゼストの城で住まわそうか。まだまだ部屋空いてるでしょ。ていうか最近、階層増えたし。なんで? 魔物だから強くなってんの?


「ああ、歓迎会は明日の夜ね」


「俺がみんなに言っておこう」


「ん、お願いね」


さてさて、さすがに夜更けすぎて疲れた。

いろいろは明日考えよう。





70日目。今日もいつも通り、いい天気。


朝ごはんは、アリスとゼストと私で食べた。

今日はまた和食だ。マナさんの、ウチでの初朝食だからね。

泣くだろうからと、マナさんはイサムとふたりにしてあげた。そういえば、イサムはパーティメンバー三人のうち誰と繋がってるんだろう。マナさんではなさそうだけど。


「ゼストは好きな人とかいるの? 」


「なんだ藪から棒に……俺は、そうだなぁ。頑張ってるやつが好きだぞ」


こたえになってないが。はぐらかされたな。


「わたくしは、タキナ様が好きですわよ? 当然、ゼスト様も、皆様大好きですわ」


「天使……」


「おうアリス、なんか欲しいもんねぇのか? 」


おい年寄り、孫の甘やかしみたいな事するんじゃねぇ。

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