110話、新しい住民


大魔道士マナを一旦街に迎えて、その後。

私はゼストの城の地下に来た。

今日のテイム、どの子に使おうかなぁ。


「スライム系でまた強くするか、他には……今のところ、必要なのってないよなー」


街に必要そうな魔物、あとなにがあるかな。

食料系はほとんど間に合ってるでしょ。

鉱石もある。

畑の人手、建築の人手も足りている。

ああ、衣服のための糸がないな。綿は育ててはいるけど……


「お、この子はどうだろ」


良さそうなのを発見。

今日はこの子にしよう。


「はいテイム!よろしくね? 」


というわけで、みてみるか。



ミスリルシルクスパイダー。

手のひらサイズの蜘蛛。

とても細く、とても硬い糸をつかって狩りをする。

糸は魔力の伝道性がとても高いため、それを意のままに操って敵を捕縛し、生きたまま獲物の血を飲み肉を食う。

糸の希少性と美しさから、その糸でつくった織物はとんでもない値段になる。



まさに理想の魔物だね。都合よく居るもんだなぁ。

この子は衣服班だ。糸を毎日ちょっとずつ徴収する。

お肉は好きなだけ食べていいからね。


魔物生成でシルクモちゃんを増やして、今日のやる事はおわり。


さあて、マナさんの歓迎会をするぞ!




「こんな……こんな事があっていいのかしら……」


「マナ、大丈夫だ。今日だけじゃない。これからずっとあるからな。朝は和食もある。大丈夫だぞ」


マナさんは、出てくる料理に涙を流して喜んでいた。

この街は美味しいもの多いから、いっぱい楽しんでほしい。

しかし、アリスほどではないが結構食べるな。調理班も大忙しだ。しかし楽しそう。お仕事が楽しいのはいい事だ。


「グラタンなんていつぶりよ……油淋鶏なんて……刺身なんて食べていいの? ほんとうに? 美味しい……」


片っ端から食べている。喜んでくれてなによりだ。


「もう私、ここに住むわ……」


「いや、わかる、わかるけど、一応我々は勇者パーティだからね? 世界を平和にする旅をするんだからね? 」


大丈夫、どこかにいくときは、イサムの無限庫にウチのごはん入れていけばいいからね。





69日目、深夜。


「王よ、深夜に申し訳ありません」


「……また来たの?」


「いえ、あの……魔族が一人、亡命に来ております」


……どういうこと?




ゼストとベルゼを連れ、むかう。

街の外。すこし離れたところ。

十体ほどの魔物を従えた、人型の生き物……魔族が居た。


「アレは……鬼人族か? 」


鬼人族。鬼か。

ゴブリンやオーガも、前世では鬼人族に属される事があったが。それとは別なのだろうな。


件の魔族の前まで歩く。

魔族が口を開いた。


「私は、魔王カオス様の配下、魔物使いのアデクです。私は、ここ、アグニ王国へ、亡命を希望します」


……魔物使い。テイマーって事かな?

後ろの子たち、襲撃に使われている子たちと違って、ちゃんと理性のある目をしている。強そうだが、アデクとやらに絶対に従う意思を感じる。


「私はこの国の王、タキナ。アデクさん、もう少し詳しく、お話を聴かせてくれますか? 」


私以外のテイマー。興味が湧いてきたな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る