109話、大魔道士


「あなたは……あの時の? 」


「あっどうも? 勇者様のお供の……えっと」


「マナ。大魔道士マナよ。あなたは確か、タキナさん、だったかしら? よかった、生きていたのね? 」


荒野の奥、馬ちゃんで二時間時間くらいのところで、勇者様のパーティメンバーと出会った。

名前おぼえててくれたんだ。嬉しい。

マナさん。え、っと……高校生、のはず。だよね? ほんとに? マジで?


「……どこ見てるのかしら? 」


「え、いや、凄いッスね……? 」


大人というか、オトナだ。すごい。全身からオトナが香る感じ。憧れるわぁ……


「ところで、聞きたいことがいくつかあるのだけれど」


小首を傾げ、眉を少し寄せる。小悪魔だ。人間じゃねぇ。


「ここはどこかしら? そして、あなたはどうしてここに? 」


うーん、どうしよう。説明めんどくさいな。





というわけで、連れて帰ってきた。


「う……今はもう乗りたくないけど、クセになりそう」


どうやら馬ちゃんはお気に召したようだ。多分。


「ここが私の街。で、ここにいろいろ……うん、見たらわかるけどいろいろ居てね、勇者イサムも今のところここに居るよ」


「イサム、無事だったのね。よかった。迷惑かけてないかしら? 」


「ん、ちゃんとお仕事もしてるからね。助かってるよ」


「ならよかったわ」


マナさんに一通り街の事を教えた。まず魔物は大丈夫かという話だが、私が強いテイマーだと言うことで納得してもらった。なんというか、事情とかいろいろちゃんと汲んでくれるいい人だ。オトナだ。かっこいい。


「イサムがいるなら、私も一先ずはここで厄介になろうかしらねぇ。なにか、私にできそうな仕事はあるかしら? 」


マナさんは、大魔道士の名の通り、魔法が凄い。魔法よりすごい事もできるという。

それならどうしようかな。なにかあるかな。

とりあえず、今ある職場を並べてみる。


「この中だと……食料調達班と、鉱石ゴーレムのところがいいわね。私、魔物を壊さずに仕留めるのが得意なの」


言い方怖。

まあでも、それならどっちでも、その日の気分で決めてもらえばいいかな。


「イサムがどこかに行くか、私たちの仲間が四人とも揃うまではお世話にならせてもらうわね。大丈夫かしら? 」


「ん、お仕事さえしてくれたら大丈夫よ。これからよろしくね」


住民一人追加だ。


さて、そろそろイサムに会わせにいこうかな。





イサムは、ゼストとトレーニングをしていた。

丁度、イサムが放り投げられたところだった。


「タキナか、どうした? 」


ゼストがこっちをみる。そのどうしたは、隣のはなんだ、という意味も込められているのだろう。


「イサムのパーティメンバーですよー。拾ってきました!」


「なんだと!? 」


イサムが吹っ飛んだ先から爆速で駆けてきた。いきおいがこわい。


「マナさん、イサムくんいたよ」


「イサム。久しぶりね? 」


「マナ!無事だったか!よかった……!」


ふたりは再会を喜んでくれた。

よかったね。あと二人も早く見つかればいいんだけど。


しばらくはウチに置いておくとゼストに説明して、私はゼストの城にむかう。

今日のテイムは、城の地下で済まそう。

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