100話、王子亡命
64日目、夕方。
スノークイーンを氷室に案内し、氷を安置してもらう。
ついでに果物を瞬間冷凍してもらった。うん、誰よりも氷の適性がありそうだな。シャリシャリだ。美味い。
十六層で拾った素材をハヤトとドワーフに預け、銭湯でひとっ風呂浴び、晩御飯。
今日はビーフシチューだ。ワインが使われているが、在庫は大丈夫か? もうすぐゴールドが来るかな。
65日目、朝。
今日もアリスと朝ごはんタイム。ヒナとベルゼはまた子供たちのところだ。今のところ母達に子供を振り分けてるけど、そろそろちゃんと孤児院的なのをつくるか?母達の負担が気になる。大丈夫そうなら引き取ってもらってもいいが。
孤児院をつくるとしたら、ベルゼが院長かなぁ。
朝ごはんを食べ終わるころ、ベルゼから連絡がきた。
ゴールドが来たようだ。
「やあやあどうも!お久しぶりです!」
「どうも。今回は早かったですね?」
前回から一週間程度か。結構早い気がする。最初はこれくらいだったか?
「すこし、緊急で買い取りたいものがございまして……ああ、アリスさん、本日もよろしくお願いしますね!」
「ええ、ようこそいらっしゃいました、ゴールド様。本日もよろしくお願いしますね」
アリスに引き継いで、私は横から少しだけ話を聞く事にした。
「早速ですが、取引の前に緊急の要件がございまして……」
「伺いますわ」
「では……いらっしゃってください」
ゴールドは後ろの馬車に声をかけた。
……嫌な予感がしまくるな。
馬車から出てきたのは、メイド……いや、それに手を貸され降りてきたのは、まさに高貴、という風な男児だった。
アリスの高貴さを、そのまま男児にしたような。
うん、これは。嫌な予感が確定だ。
「この御方は、ヘリオス王国、第三王子。ロミオ・ヘリオス・フロイト殿下であります」
「紹介に預かった、ロミオ・ヘリオス・フロイトだ。ロミオでいい」
「あ、どうも。私はここアグニ王国、国王のタキナです」
……私の挨拶に、みんながちょっとギョッとした。なに?どうせ国になるんでしょ?今でいいでしょ?違う?ごめん
「あー、私ゴールドが、委細説明させていただきます。この御方、ロミオ様は……この街、いや、アグニ王国へ、亡命を希望されます」
うん、やっぱり厄介事だ。しかも、避けられないやつ。
ロミオ様は、ゴールドのいる国の王子だそうだ。ヘリオス王国って言うんだね。知らんかった。
で、魔王の襲撃が最近ちょっとマジでやばいので、国に残ってる王子王女を各国に預かってもらおうって話になっているという。
しかし第三王子は何故か行き場が決まらず宙ぶらりんだったそうで、ゴールドが領地で預かると引き取ったそう。
しかしゴールドは、自領よりはこっちのほうが安全だろうと、独断で亡命、というよりは安全な土地への護送を決めたという。
「その護衛騎士二十名。これは王子のためのコマでございますので、王子の命令がない限りは発言ひとつ致しません。そしてメイドが五名。こちらも王子の付属物です。しめて二十六名、どうか、この王国に置かせていただけないでしょうか?」
うん、まあ土地もあれば食料の余裕もある。
まったく無理ではない、が。
「当然、なにか会った時の免責はありますわよね?あとは住むところでございますが、一般よりは大きな家には致しますが、最上級とはまいりません。よろしいですわね?」
王子様を預かるのはこわい。
アリスやブラインは国王だし、もう戻る国もないから、何かあっても私たちは責任を追求されない。なんも起こらないようにはするけどね。
だが現存の国の王子となると。
「なにがあっても、あなた方にはなにひとつ責任を問いません。そもそも、国では安全を保証できないからこそこちらに依頼させていただいておりますからね。それに、私はここが世界で一番安全だと思っております。……場合によっては、私もこちらに住みたいほどに、ですよ」
ま、安全は安全だろうね。魔物に守られているのだから。
しかたないな、預かるか……。
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