99話、炎と氷
最後の城壁を潜る。目の前には、大きな城が見えている。
もちろん、これも崩れているが。
そして、城までの間には、当然魔物がいる。
「また燃えてるっすねー」
「大丈夫?勝てる?」
「誰にいってんすか」
燃え盛る馬に乗る燃え盛る鎧。デスキャバリーよりひとまわり大きな魔物は、ヒナに向けて突進。
ヒナは近寄らせる前に、飛ぶ斬撃で一刀両断。
「ま、柔らかいすね。これくらいなら余裕っす」
余裕の言葉通り、次々やってくるそれらに全て対応。余裕で制圧。
ひとまずは、脅威は去った。驚異ではなかったと言われたら、それはそうだが。
「まだまだ魔物はいそうっすけど、ひとまず城に向かう、でいいんすよね?」
「うん。どうせみんな燃えてるし、テイムしてもだよね」
テイムしてもどうせ街で使えないだろう。
木造の建物も多いし、やめておこう。
城までの間に、やはり何度か戦闘があった。
先程の魔物にくわえ、前のエリアにいた魔物もいた。フランベルジュが振り上げられ、振り下ろされる前に体を斜めに切り伏せられる。ヒナの相手ではない。
そして、城の門に到着。
当然のように半壊しているため、簡単に入れそうだ。
一応、崩れないようにぶっ壊してから侵入。私の出番はこれくらいかもしれない。いや、これから出番あるから。テイムまだあるから。
「上は……無理っすね。奥っすかね?城の裏庭?」
「ああ、上は無いか……飛べないからなあ」
階段やら壁やらが壊れているため、上階へはいけそうにない。
ところどころ崩れているので、とりあえずは中庭か裏庭に出たいと思う。
城の中にも、魔物は当然いる。
燃えるコウモリ、燃える鎧、燃えて飛んでくる剣、燃えるゴーレム。
「熱いっす!」
「たしか、気を纏わせたら……うん、ちょい涼しい」
「それ私もほしかったっす!スキルオーブ、無いっすかね」
また拾ったところ見に行ってみるか。
出てくる魔物は厄介だが、危なげなく討伐を続ける。
魔物より、崩れてくる壁やらのほうが危ない気がする。崩壊するダンジョンってありか?
しばらく進むと、厨房のようなところに差し掛かる。
中には、見たこともないような食材たち。
「え、持って帰ろうかな」
「怖くないすか?あでも野菜とか増えるのはいいことっすよね。ハヤトさんに研究させるっすか?」
「そうね、肉はやめとこ。野菜と根菜を……うん、かばん持ってきててよかった。メタスラちゃん居たらいらないんだけどね」
メタスラちゃんのかわりにはとてもなり得ないが、かばんに一種類ずつ、十個ほどの野菜類を詰め込む。これはハヤトに研究させよう。大丈夫そうなら育てようね。
「で、この……中ボスっすかね? 炎じゃなくて氷のオーク。強かったっすねー」
強かったと言うが、五合も打ち合ってないんだけどな。
厨房にいたのは、氷を操るオークだった。
今までと真逆の性質だが、なにか理由があるのだろうか。
「ま、進もうか。多分裏庭はすぐでしょ」
「なんでっすか?」
「厨房の裏は庭って相場が決まってるもんだよ」
「そうなんすね?」
知らないけど。
だがやはり、裏庭はすぐそこだった。
裏庭には、氷を纏った魔物が沢山いる。
「趣向が変わったんすかね?」
「いや……もしかして、戦争?」
「あー、なるほど?」
つまり、炎の軍が、氷の城を攻めている、って事かな。
となると、ボスはどっちだ? できれば氷がいいな。
少し進むと、炎の魔物の残骸が散らばっている広場についた。ここでは氷が優勢、ってことか?
「で、ボスはアレっすかね?」
「お、おおう。さむい」
「さむいっすねー…………向かってくるっすよ!雑魚は任せるっす!」
魔物と、ボスらしき相手が一斉に向かってきた。
雑魚は任せ、私は目の前のボスを見る。
「テイム!はいヒナを手伝って!」
頭を失った魔物たちは一瞬動きを鈍らせるが、すぐに戦闘態勢を取り戻す。が、ヒナはその一瞬で半分をもっていった。つよい。
ボスも、しっかりと魔法で援護している。自分の手で元配下を手にかけるのはちょっと可哀想なので、援護だけで許してあげる。
「よし、終わりっす。ちょっとそこの燃えカスで暖まってくるっす」
そういって、広場の端の方にある炎に向かっていった。
私は、ボスと向き合う。
うん、可愛いな。
魔物情報をみよう。
スノークイーン。
吹雪と氷に覆われ滅亡した王国で、最後まで民のために奮闘した女王の無念と絶望が魔物化したもの。
白い肌、白い髪、青い眼、白いドレス、その全てが冷たく凍える美しさをもつ。
氷と雪を操る。自身の作り出した氷がある限り、何度でも復活できる。
おお、半不死身!この子の氷はそこら辺に安置しておいてあげよう。氷室いくつかあったはずだ。
しかし、可愛い……いや、美しいな。
「その子、可愛いっすねー。また美少女が増えるんすね」
「なにその、美少女集めてますみたいな」
「え、違うんすか?」
みんな勝手に来たんだよ、魔物以外は。……そうだったよね?
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