76話、魔物娘


島から帰ろうと、扉から島に戻ったところ、扉は一度消えてまた生えてきた。


「な、なんで?」


「はえたのです」


また別のところに繋がったのかな?

はいる、か。


「またちょっとまっててね」


「はいなのです!」


というわけで、入ってみる。


「わ、マジ?」


そこは村だった。

そしてその村は、今、スライムに襲われていた。

ほぼ全壊かな?生存者もいなさそう。遺体もないけど。

どうするか。


「マリア、来ていいよ。……どうしよ?」


「とりあえず倒すのです?」


倒すか。マリアにお願いして、ほとんど倒してもらった。


さて、探索。誰かか何かないかな。


しばらく適当に探索したところ、ひとつの家に鍵が掛かっていることだけがわかった。

ノックしても反応はない。突き破るかな。


「おじゃましまーす!」


どがんと蹴り破り、中を見る。

中には、ひとりの少女が横たわっていた。

が、溶けかけていて……いや、違う。


「スライム娘ってやつ?」


「人ではないのです。魔族でも……ないのです?」


これは、人型のスライムだな。

よし。


「テイム!かわいいねスライム娘」


スライム娘を匿った結果がこの村の惨状、なのかもしれないな?

うちは大丈夫だろう、多分。



スライムガール。

人型、主に女型の、スライムの特異種。

魅了のスキルをもつ。

一般的なスライムより断然知力が高い。

基本的に生物に友好的で、あまり敵対しない。

果物や木の実を主食にするが、スライムなので実際は肉でもなんでも食べる。






今度こそ帰宅。

スライム娘はマリアが預かることになった。妹にするそうだ。言葉がわかるかも怪しくないか?


何事もなく平和だったようで、みんな普通に働いている。

勇者イサムが、ゼストと街を歩いている。今日の修行が終わって、これから調理班のところにいくようだ。


途中、ハヤトに呼び止められた。

どうやら、また新しい装備を開発したようだ。


「今回は、沢山いるスケルトンを戦力にするための兵器をつくったんだ。迫撃砲に近い構造で、数種類の弾をうちだせるようにした。花火のほうがわかりやすいかな?大砲よりもうちょっと射角がつけられて、壁越しでの攻撃に便利かなと思うんだ」


スケルトン数体で運用する兵器らしい。弾によっては、炸裂とか炎上とか魔力爆発とか、いろいろできるようだ。


「他にも、普通に大砲もつくったんだけど。これは軽量化してるから、オーガ一体で運べるんだよ。オーガ一体とスケルトン二体くらいでの運用を想定している。大型の魔物にはあんまり効かないだろうけど、前回みたいに小型が多かったら便利かもね」


「で、あとは……飛行系の魔物にもたせる爆弾もつくったよ。空襲ってやつだね。これは、大きさや内容によっては、大型にも効くかもしれない。まぁ、どうあがいてもヘッグちゃんのほうが便利なんだけど……」


そうなんだよな、空からの攻撃がしたいと思ってたんだけど、ヘッグちゃんとベルゼのコンビで大抵はなんとかなっちゃうんだよ。

もちろん、魔物たちに武器はもたせて、街でも戦えるようにしてはいるが……

そのうち役には立つだろう。うん。


それからも街を見て周り、時間を潰す。

そろそろ晩御飯の時間かな?城に戻ろう。

晩御飯は、城のホールでみんなで食べている。

城もなんだか、また一段と内部が広くなってる気がするな。魔物だからか……?





晩御飯は、カレーだった。

マジか、カレー。色々なスパイスをどうこうして煮込んで……みたいな説明ではさすがに調理班に伝わらなかったが、勇者イサムがなんとかしてくれた。

茶色いドロドロの液体に、最初はみんなおっかなびっくりだったが、私とイサム、そしてハヤトとゼストがバクバクと食べているのをみて、他の住民も食べ始め、今はほぼ全員がおかわりしているところだ。

この調子で、前世の料理をもっと再現してほしい。いやほんとに美味しいなこのカレー。三杯目、いただきます。

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