66話、氷の迷宮


支配下におけるとはいえ、今すぐここの住民を上の街に連れていく、なんて事は多分しないほうがいいだろう。大きな問題は起こらないだろうが、もう少し整備されてからがいい、と思う。

この町の住民たちは、自分たちが私の支配下に置かれたのは理解したそうだ。アビスの力を感じると言っていた。そういう感じなんだな。

しばらくしたら迎えに来るからね、と伝え、十三層に降りる事にした。町を抜けた先のバス停前に、階段があった。





というわけで、アビスの迷宮、十三層に到達。


「お、角なくなってるぞ」


「え、ほんとだ。なんだったんだろう」


角は引っ込んだようだ。よかった。まだ人間のはずだ。


十三層は、氷だった。


「さむいのです」


「こういう時は魔力循環だぞ、お前ら。自分の体の表面で魔力をぐるぐると巡らせるんだ」


お、たしかに暖かくなった気がする。マシかもしれない。

それでもやっぱり寒いな……。


見渡す限り、全部が氷。山や丘のような起伏はあるが、全てが透けている。中に動物が埋まってたりするが……


「さかななのです」


真下に魚が閉じ込められていた。大きめの、鱒のようだ。今立っているここは川なのか。

掘り出したら食べられないかと思ったが、氷は破壊出来なかった。ヒナさんでも無理だった。


風が無いのでマシだが、震えながら進む。氷なので滑るかと思ったが、意外に歩ける。ゼストは浮いて移動してるが。


魔物は、いる。ゼストに名前を教えてもらいながら進む。

アイスエレメンタル、アイスゴーレム、スノーマン、アイスワイバーン、ホワイトベア……見知ったのも居るな?魔物なんか?


「ホワイトベアかわいいのです」


「そうだな。だが、アレは地上では暑すぎて辛い思いをさせてしまうだろう。ペットにするのはやめてやろう」


「わかったのです」


この階層の魔物は、地上では快適に過ごせないようだ。テイム、したかったな。アイスゴーレムとかめちゃくちゃカッコイイし……


しばらく、討伐を重ねながら探索をつづける。

大抵はヒナさんの炎を纏わせた斬撃か、メタスラちゃんの炎魔法で片がついている。

そうして進んでいると、今まで見なかった魔物を発見した。


「でっか」


「おおきいのです」


その先には、巨人がいた。

サイクロプスより大きく、ガタイがいい。


「フロストジャイアント……珍しいな、アレは強いぞ?群れたらドラゴンとも戦える」


ドラゴン。トロちゃんですら、他のドラゴンよりは弱いという。単体でなく群れならとはいえ、ドラゴンと戦えるとは……強すぎでは?

これは、テイムしておこうかな?でも環境がなあ。


「上でも大丈夫かなあ」


「ああ、フロストジャイアントは寒冷耐性のスキルがあるだけで、別に普通の環境でも問題なく活動できるぞ」


あ、それなら大丈夫か。


「じゃ、テイム!よろしくね、ジャイちゃん!」



フロストジャイアント。

筋肉質な人間をそのまま巨大にしたような体格の魔物。見た目に相応しい強靭なパワーを誇る。

寒冷耐性のスキルと、身体強化のスキルをもつ。

知性と連携力が高いため、群れるとドラゴンをも狩れるといわれる。斧やハルバードなどの武器を持たせると更に強い。

基本は単独や数体の群れでの狩りによって食料を得るが、オオカミや下位種族を使役し、牧畜や農耕を行う群れもある。



おお、無難に強そうな感じがする。知性と連携力とで強敵を追い詰めるのは、人間もそうなんだよな。弱い人間と同じことを強い種族がやると、そりゃ強いんだよなぁ。


「ま、私よりは弱いっすけどね」


ヒナさんはまぁ、人類の上澄みの強者だから……人外の特級だから……


テイムも使ったので、今日は引き上げる事にした。

フロストジャイアントは、とりあえずは建築班に配属。その後は二層の食料班かドワーフに貸し出しか、ジャイちゃんの選んだ方だな。

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