67話、再侵攻


49日目。

朝ごはんはピザトーストとコンソメスープ。

肉の加工品としてサラミやペパロニなんかもつくられ、また料理の幅が広がった。オリーブのようなものも見つかったので、オリーブオイルも確保。順調にグルメ開発が進んでいる。嬉しい。


「ピザのトマトは好きなのです」


「サラダの時も食べなさい」


最近はゼストとアリスは子供たちと一緒に朝ごはんを食べていることが多い。アリスのマナー講座付きだ。私もマリアと一緒に受講しないとな。


のんびりと朝の時間を過ごしていると、偵察に出してる魔物と連携をとっているベルゼから、緊急の呼び出しがはいった。他の主要人物たちと一緒にだ。





ゼストの城の応接間に集まる。


「魔物数万が、この街に向かってきております。おそらく、現魔王の手先かと」


ベルゼが報告する。

どうやら、二度目の侵攻がはじまったようだ。


前回と同じく、砂漠方面に半日程の距離に、一塊となって数万の魔物が出現した。前回と違い、上位種の魔物や、飛行型の魔物もいるようだ。トロちゃんだけじゃ厳しいか。


まず、住民は全員、ゼストの城に避難する事に。

街の守りとして、黒龍とスラちゃんを主に、手が空いた魔物を配置。スケルトンは街の見回りに。

ゼストとヒナさんは城で住民の護衛。

戦場へは、私、マリア、ベルゼと、トロちゃん、ヘッグちゃんが向かう。


「きらきらちゃんに乗っていくのです!」


きらきらちゃん……ゴージャス・キャバリー、名前がつけられたようだ。よかったな。


偵察をしてくれた魔物によると、数万の魔物のうち、一万ほどは小型の雑魚のようだ。ゴブリンやスケルトンなど、数にもならない。まあでも、うち漏らさないようにしないとな。

大型の中には、サイクロプスやスケルトンドラゴン、ジャイアントもいる。ジャイアントは、フロストジャイアントよりは弱いらしい。それでも人間には驚異に違いないが。

空にはワイバーンや、鳥系の魔物、虫系の魔物も多い。


「ああ、ゴーストモスキートも試してみるかな」


相手を操る能力があったのを思い出した。前線の雑魚に使ってみよう。


ひとまず、トロちゃんに乗った私が走り回って、有って無いような戦線をぐちゃぐちゃにする。

空はベルゼがなんとかすると言ったので、全てまかせよう。大丈夫だとは思うが、取り逃しがあったら私がやる。

地上の取り残しの雑魚はマリアに任せる。いつもより気合が入ってるようだ。

すこし強いやつはヘッグちゃんが能力を使って足止めし、みんなでボコボコにする、という流れで行くことに。あとは流れを見て臨機応変に、だな。

正直、報告された程度の強さの魔物だけなら、問題ないと思う。


「前回の黒いスケルトンみたいなのがいたら、今日こそテイムしたいな……生き残ってたらだけど」


というわけで、みんなの準備が整った。

避難も済んだし、いこうか。





街から出て、数時間ほど。

前方に魔物の群れが見えてきた。一面真っ黒に見えるほどの密度と量だ。数万どころか、数十万いるのではと思える。


「お先に失礼しますね」


ベルゼが先行する。

猛スピードで敵の群れに接近しながら、両手を広げる。これまた一面真っ黒に見えるほどの、小さな点が発生した。


「蝿の王たるわたしの眷属、キラーフライ。この子達にわたしの能力でスキルをあたえています。『黒炎属性付与』で、全ての攻撃に地獄の炎上効果が付与されます。つまり……こういうことです」


キラーフライの群れが敵の飛行型魔物の群れに突っ込む。

途端、敵の魔物たちが黒い火だるまになって落ちていく。キラーフライと接触した瞬間に炎上していく。噛んだり刺したりしてるのだろう。

火はすぐに消えるが、落下した魔物は敵の歩兵たちに踏み潰されたり、そのまま地面に激突したりして絶命していく。ワイバーンさえ、その黒炎からは逃れられていない。

そのままの勢いで進み続け……空の全てを燃やし尽くし、ベルゼが戻ってきた。


「如何でしたか、新たな王よ。わたしも、少しは役に立つでしょう?」


ああ、ほんとにね。さすが私の配下だ。


さて、私たちもしっかり頑張らないとね。

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