64話、街の日常
魔大陸では謎が謎を呼ぶような話が盛りだくさんだったので頭がパンクしそうだった。
頭がこんがらがって大変だったので、今日のテイムは帰り際に四層に寄って済ませた。
テイムしたのはこの子。
ヘルロッククラム。
硬い貝。とにかく硬い。アダマンタイト並の殻に、更に防御系の魔法が何重にもかけられている。
とても濃厚で美味しいプリプリの大きな身と、真白に輝く大きな真珠を擁する。
とにかく全方位が物理魔法両方に強いため、どうしかして内部から攻撃するしか倒す方法はない。
防御力がとてつもないかわりに、攻撃力はほぼない。つまりほぼ置物。
というわけで、先日見た貝をテイムしておいた。
なんとこの子、ほとんど自分で動けない。遅い。
なんでテイムしてしまったんだろう。どこで飼おう……と思っていたが、ひとまずゼストが預かってくれるらしい。嬉しいな。そのうち城のなかにアクアリウムをつくりたいらしく、その時の中身のひとつにするようだ。いいじゃん、アクアリウム。
晩御飯にボタン鍋を頂いた。
ようやくアグニの街で味噌がつくられたようなので、鍋には自家製味噌が入っている。
もともと、味噌も醤油も米も、この大陸には存在したので、ある程度はゴールドに持ってきてもらっていたのだが、ようやく自分のところでちゃんとしたものを食べられるようになったんだ。感慨深いね。
米の田んぼも、試験的に少しつくっている。こっちは水の管理が難しいようで、収穫は出来ているがなかなか上手くいっていないと報告を受けている。
味もな……品種改良、していきたいね。
このボタン鍋に使われている全ての具材がアグニの街で得られたものだ。この街も、ここまで来たんだな…。
「野菜もたいそう美味しいですな」
「おじいちゃん、私のもあげるのです」
「こら、ネギもちゃんと食べな?」
という感じで、47日目は終了。
いやあ、魔大陸での話が難しくて頭が痛い。
そして、48日目。
もうここに来てから50日近くになるのか、と、すこししみじみしている。ずっとこのまま平和だったらいいんだけど。
朝ごはんは、ワッフルとミルクティー。
ワッフルの金型をドワーフにつくらせたのだ。当然、子供たちは大喜び。マリアも私も大喜びだ。
アリスはハチミツを付けて食べている。マリアはハチミツに漬けて食べている。ゼストはマリアのソレをみてちょっと眉に皺を寄せた。わかるよ……。
紅茶は、ゴールドから買ったものだ。
森でも茶の木が見つかったようなので、近いうちに紅茶も自家製になるだろう。茶葉をどうこうできる知識のある人がいれば、だが。エルフならどうだろうか。
午前中に街を見て回る。
ドワーフの工房は、いつも通りの熱気だ。
最近は武器より、私やハヤトから頼まれた金型やら機械やらの制作が多い。
次につくってもらおうとしているのはタコ焼きプレートとたい焼きプレートだ。
タコはまだ食べたことがないが、タコ以外でタコパをしたい。たい焼きの為の餡子は自家製がある。プレート完成が楽しみだ。
調理班は、いつも通り大忙しだ。もう夜ご飯の下拵えをしているグループもある。
ちなみに朝ごはんは配給制、夜ご飯は食べ放題制、昼ごはんは弁当制だ。
調理班が午前の空いた時間で適当に200食分くらいの弁当をつくり、仕事の区切りで昼飯が食べられるようになった人達がバラバラのタイミングで弁当をもっていって食べる。
朝と夜はともかく、昼は仕事によってご飯のタイミングが難しいからな。この形式も、調理班が決めた。優秀だ。
お手伝いのスケルトンも増やしたので、もう少し楽が出来るようになるだろう。足りなかったらまだ増やすからね。
畑のほうは、なかなか順調のようだ。
やはり規格外に大きくなった食材が所狭しと並んでいる。大きいのにちゃんと美味しいんだよな。
田んぼは先述のとおりだ。他の野菜と同じように数日で収穫できるのはいいが、稲がめちゃくちゃ吸うため水量の調整が難しいようだ。
品種改良の旨を伝えて、引き続き頑張ってもらう。ハヤトも私も、美味しいコメに飢えている。
子供たちは勉強をするか、仕事の見学をするか、武器の訓練をしている。どれかに偏ってもいいが、五日間で一回はそれぞれをするようにと決めている。将来の出来ることの幅はあったほうがいいからね。
母子の中からは、服を縫い直す係の人もできた。
糸や布はまだ買ってるけど、そのうちウチでもつくりたいな。糸出す魔物とか探すか。
今日も一通り見て回ったが、いつも通り平和だ。
この日常を守るために、昼からも頑張るぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます