46話、焼鳥、唐揚げ、油淋鶏
35日目。
今日の朝ごはんは、スクランブルエッグとソーセージ、オニオンスープ。
ゴールドが連れてきていた鶏から生まれた卵からヒヨコが産まれていたのだが、それが圧倒的速度で成長して巨大鶏になった。それの産んだ巨大卵でつくられたスクランブルエッグは濃厚で味が強く、ゴールデンホルスタインの乳でつくった最強のバターとの相性が最高だ。
ソーセージは、二層でとれたイノシシのものだ。
これはエルフたちが、イノシシのミンチと香草を混ぜ込んで腸詰めにした。めちゃくちゃジューシーだが、香草のおかげで爽やかさも感じられる。
オニオンスープに使われている玉ねぎは、ゴールドのいる国では栽培されていないものらしい。玉ねぎはあるのだが、この品種が特別なもの、だそうだ。これは甘みが強くて飲みやすい。前世で言うところの淡路島の玉ねぎに近いか?
ということで、今朝も『そうそう、これでいいんだよこれで。的贅沢朝ごはん』を堪能した。
ご馳走様です。
さて、今日はまたアビスの迷宮に潜ろう。
迷宮九層。早くクリアして、できれば十層を見ておきたいなあ。
「じゃ、いこうか」
「はいです!」
「今日は戦えたらいいんすけどねー」
八層は敵対しない超巨大生物しか居なかったので、消化不良感があった。九層は楽しかったらいいなぁ。
ということで、アビスの迷宮、九層目。
「多くないっすか?」
「多いのです」
「え、こんなにいると気持ち悪いな……」
目の前に広がるのは、砂漠だった。
そして、その砂漠の空を覆い隠すほどの、ワイバーンやグリフォンの群れがいた。
百や二百ではきかない。数千は居るだろう。
それが一斉に襲ってきた。
「ちょ、え。みんな迎撃!」
「これは楽しくなりそうすねぇ!」
「わ、戦うのです!」
ヒナさんが魔法斬撃を飛ばし、一撃で数体まとめて切り捨てる。何度も何度もぶんまわし、殲滅していく。
マリアが身体を霧状にし、向かってくる魔物の群れに散っていく。マリアが元の姿に戻った時には、数十体の魔物が息絶えていた。
トロル君は超速で一体ずつワンパンしていく。飛んでる魔物を殴り潰し、それを足場にまた上の魔物を殴る。
メタスラちゃんはガトリング砲のように石弾を乱射している。命中精度は悪そうだが、これだけ壁のように魔物がいると命中しないほうが難しい。
私は気を使い、気の玉を適当にぶん投げまくる。空中で魔物に当たると爆発し、数体を巻き込む。
数分か数十分か、戦い続けた。
「これで、最後っす!」
「ふう……疲れたぁ」
「楽しかったのです!」
なんとか、全て処理できた。
砂漠に魔物の死骸が積み重なっている。……すごい量だ。
「これどうしようかな」
「さすがにこんなには持って帰れないっすよ。勇者のもつ『アイテムボックス』ってスキルがほしいっすねー」
「ハヤトさんなのです?」
ああ、あの人、元勇者だったな……
一度帰り、ハヤトに話をする。
どうやら彼はそのスキルを失っているらしい。徒労だった。
また、九層に戻る。魔物の死骸は、放置することにした。仕方ない。
「まあいいや、進もうか」
死骸を避けながらしばらく進む。
また疎らにワイバーンやグリフォン、ワームなどが襲ってはくるが、たかだか数体だともう驚きもない。
「この層は鶏肉層かなあ。また派遣組考えないと」
「ワイバーンは美味いっすからね!グリフォンは食べたことないっすけど」
「とりにく!また焼鳥食べたいのです」
やいのやいの言いながら襲撃を叩き落としつつまたしばらく進むと、やはりというべきか、ボスらしきものがいた。
砂漠のど真ん中、屋根がなく柱が欠けたパルテノン神殿のような建造物の中央に鎮座している。
「八本足のトカゲ……バジリスクかな」
「私の知ってるバジリスクはこんな強そうじゃないっすね」
「目がこわいのです」
八本の足、鈍く光る赤い鱗、太く長い尻尾、そして見るものを射殺さんとする鋭い目。
巨大なワニのような体躯だ。
「じゃ、テイム。よろしくね、バジちゃん」
「ボス戦スキップ、イカサマっすよね」
「チートってやつなのです。ハヤトさんが言ってたのです」
はいじゃあ魔物情報をみようね。
ドラゴニックバジリスク。
神がドラゴンを創った際の試作品。アビスの迷宮に封印されていた。
鎧がドラゴンのもので、物理も魔法もほとんど通じない。鱗のある部分はほぼ無敵といえる。
視線に石化能力を乗せることが出来るが、獲物が食べられなくなるのであまり使わない。
唾液は猛毒で、肉を溶かしながら食べる。
鱗はよく抜け落ちる。すぐに生え変わる。
相変わらずボス級は強いな。
この子はどうしよう、運搬係にするかな。攻撃が爪と牙で、牙は猛毒だし、調達班には出来ない。
「今日の分でトロル君増やして、この子と九層鶏肉回収班にしようかな?ワイバーンの肉楽しみだなぁ」
「あれ食べたいっす、唐揚げ!ワイバーン肉で!」
「私も食べたいのです!」
という事なのでそんな感じで決定だ。
結構動いて体が大変汚れているので、十層のゲート登録だけして、今日は帰る。
帰宅。いろいろ済ませ、日が沈んだころに風呂に入る。
風呂があるって素晴らしいね。心が洗われる。
「みてほしいのです!くらげなのです!」
マリアは湯船にタオルを沈め、おなじみのアレを見せてくれた。
どの世界でも子供は同じことするな。
「みてほら、手をこうすると……えいっ」
「ひゃ!魔法なのです!? ……こうなのです!」
「お、上手い!的当てしよっか、的置くね」
「勝負なのです!」
どの世界でも、子供にはこれを教えないとね。
なお、的当て勝負にはぼろ負けした。
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