47話、龍神様


36日目。


今朝はチーズトーストとフルーツジュースをいただいた。

ドワーフがパン窯を増設し、調理班はそれで毎日パンを焼いている。

今ではいろいろなパンを作成できるようになっている。今朝は食パンをいただいたが、プチパン、フォカッチャ、ロールパン、イングリッシュマフィン、ベーグル、それからそれらを使う惣菜パンなども作れるようになっており、食卓が毎日楽しいことになっている。

ついひと月前までは生肉と果物しか食べてない原始人生活だったんだよな、と、しみじみする。


「もっと人増えたら、料理屋さんとかできるかなぁ」


街の発展も、そこそこいい感じだ。


簡単に地理関係を説明しよう。


まず、我々のいる「魔の森方面」は、大陸の南端にある。

ゴールドの領地から、南へ馬車で一日ほどで元ドワーフの村。そこからさらに南へ一日半ほどで我々のアグニ村につく。

魔の森は、アグニの村の南東に向かって広がっている。そして南西側に死の荒野がある。

街は私の家を起点に北に向かって扇状に広げられており、魔の森側に機械工場や材料加工場、荒野側に食品加工系の建物が並び、間に住居が広がる。

畜産や畑などは食品加工系の建物のさらに外側に広げられている。

私の家の裏手には魔物たちの住処が少しずつつくられている。ひとまず大型の魔物以外は、壁は無いが屋根の下で暮らせている。厩舎のような感じだな。

そして、私の家から真っ直ぐ北へ向かってとても太い道があり、そのあたりは今のところなにも建っていない。ここは様々な店を建てたいと思っているのだ。店を持ちたいと思ってくれる人がいればいいのだが。人口は増えていくし、期待はしている。

私もひとつ、なにかを売る店をもちたい気がするな。なにもつくれんが。テイムした子たちの落とした素材を売るお店とかどうだろうか……適正な値段がわからないから厳しいな、ゴールドあたりから教えてもらわないと無理かも。


「ま、おいおいだなー。もっともっと発展してね、私の街」


紅茶を飲み干し、街へ向かう。


腕輪で海鎧とオーガを生み出し、魔物生成でオールゴーレムをつくる。オールゴーレム、運搬係として優秀すぎるのだ。あまりにも優秀。100体ほしい。





今日は、ようやく到達したアビスの迷宮十層を攻略しよう。

多分ボスだろう。そして多分、ニーズヘッグよりやばいだろう。

ヒナさんとマリアは留守番、私とメタスラちゃんだけで行こうと思う。

思ったのだが。


「俺もいく。なんかあったらマズいだろ」


ゼストがついてきてくれることになった。正直ひとりじゃ寂しかったので心強いな。





アビスの迷宮、十層。

そこは、壊れた神社の境内だった。


「神社……?なんで?」


「おお、どこかの大陸で見た事あるな」


どうやらどこかには和風テイストの土地があるようだ。そのうち行ってみたいなぁ。……この大陸の国もほぼ見てないんだけど。

さておき。


「アレがボスだよね」


「正直、アレは地上に出したらやばいだろう……俺ならここで消しておくな、アレは」


そこに居たのは、龍だった。

ドラゴンではなく、蛇のような見た目の方。色は黒で、全身から邪気のようなものが漏れ出ている。絶対にヤバいやつだ。

ゼストがやばいと言うからには本当にヤバいんだろう。だが。


「はいテイム。どんな子か見てから決めよう」


即テイム。なんか龍の側から驚きの感情を感じる。びっくりした?



黒龍。

極東の大陸で祀られていた、異世界の神獣。

とある出来事により邪に呑まれ、神によってアビスに封印された。

本来は聖なる力を操り、人々に恵みの雨や豊作豊漁をもたらす聖獣とされていたが、現在は嵐を呼び出し、破壊をもたらす邪龍となっている。



うーん、やばいやつ!

でもこれは邪気をなんとかできたらとても良いのでは?どうにかならんか……?


「邪気……この気はなんともできないかな」


「自分のじゃない気は無理だな、さすがに。しかし邪気か……聖剣なら邪気を祓えるというが」


「聖剣…………あっ」


「…………あっ」


聖剣、つくれるやついたわ。

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