45話、気をつかう
結局、時間も時間だし、九層は次回にしようということで、日が沈むころに街へ帰還。
今日の分のテイムはゼストのところでしよう。
城の地下、牢が並んであるのを眺める。
「こいつらは気性が荒すぎたり、こっち側の倫理観が全く理解できなかったりするヤツらでな、さすがに仲間にできねぇが、それでも野放しにもできねぇよなって事でここに集めてる。タキナがテイムすれば、命令には絶対服従だからな、安心して日の元に出せるぜ。感謝してるぞ」
との事だ。
心置きなく私のものにできるって事よ。
「今日はどの子にしようかなぁ。やっぱり七層班増やしたいもんな。ゴーレムを倒せそうな子……この子かな?はいテイム!よろしく!」
ガン・ケン。
リビングアーマーの特殊個体。巨大なランスと巨大な盾を装備している。ランスチャージとシールドバッシュのみを磨き続けた結果、そのランスはアダマンタイトを貫き、その盾はドラゴンをも昏倒させるという。
武器を振るう事しか考えていないので、一日中戦わせておくといい。
「ガンちゃん!よろしくね。デュラハンみたいなものかな?」
黒く輝く鎧の、首のあるはずのところからは黒いモヤが湧き出ている。ヘルムは持っていないようだ。
武器からも、黒いモヤが漂っている。恐ろしい雰囲気を感じる。
彼はアビス七層、鉱石ゴーレム収集班に配属だ。
睡眠を必要としないかわりに、一日中戦っていたいそうなので、とりあえず一日一度だけスラちゃんタンクからの魔力補給を義務付けて、あとは七層で自由にしてもらうことにした。
魔物作成では、オールゴーレムを増やした。
二体目には二層と三層でいい感じに運搬係をしてもらおう。オール二号だ。
さて、少しだけ、気の使い方を練習してみよう。
どうやらこのスキルは、自分の生命力を操るもののようだ。
生命力を纏い鎧のように身体を守ったり、八層でやったように気を飛ばしたりできる。
どちらも生命力を消費するので、結構な諸刃の剣となるようだが、その分強い。そして私には、とんでもない量の体力がある。体力は生命力と同義のようだ。さらに気をつかった攻撃は込めた生命力に比例するので、使用者の攻撃力には依存しない。タキナは腕輪で攻撃力が半分に減っているが、それによるデメリットがない。つくづく、私のためにあるようなスキルだなぁ。ユニークスキルではないので、他の人も得られるものなのだが。
気を練り、手のひらに集める。体に纏わせ、そのまま弾けさせる。掴まれたり覆いかぶさられたりした時の脱出手段につかえそうだなこれ。
もともと扱えたかのような感覚になってくる。これがスキルを得るって事なのかな。
「えへ、楽しい」
もっといろいろと使い方を考えよう。
ひとまずは私も攻撃手段を得たということで、とても気分がいい。
「気……体力、生命力。誰かに渡したりとかできないか?できたらヒーラーにもなるじゃん。纏ってタンク、ぶん投げてダメージディーラー、受け渡してヒーラー。え、私、万能かもしれん!」
使いこなせさえすれば本当に強いかもしれない。本当に、ユニークスキルとの相性が良すぎるな……
だが、私はまだこのスキルを過小評価していたようだ。
「そういえば、気のスキルを得たんだってな。俺も使えんだぜ。ちょっと教えてやろうか」
気の練習を終えようとしたころ、ゼストが家にやってきた。
マリアに会いに来ただけなのだが、少し話をしていると、気の話になった。ゼストもこのスキル使えるのか……
「気ってのは、生命力を操るもの、だと思ってるだろ」
「え、うん、そうじゃないんですか?」
「あってるが、それだけじゃない。気ってのは、自分を構成する、肉体以外の全てだ。たとえば、魔力も気だし、気配もそう。魔法はまた別だから使えないが。思考や雰囲気なんかもそうだな。鍛えれば、それら全てを操れる。こんな感じで。な」
ゼストからの圧が強まった。一瞬だけ、息が苦しくなる。
「おうふ……びっくりした。今のは気配と魔力ですか?」
「お、わかってんじゃねぇか。何されたかわかったなら、自分もすぐ使えるようになるさ。思考なんかは、操って高速化すると素早い判断ができるようになるだろうし、雰囲気を操れば、カリスマがあるように見せることもできる。タキナは頭はおかしい癖にちょっと自信なさげだからな、街の長として演説とかあるときは、そう使うのもいいぞ」
頭おかしいってなんだよ、この街の住民ほとんど頭おかしいでしょうが。
結論、このスキルは思ってた以上に凄かった。
そして、ゼストも思っていた以上に凄かった。
もしかして、これを教えるために来てくれたのか?マリアに会いに来たフリをして?
気を使わせちゃったかな。
と思ったが、本当にマリアに会いに来るついでだったようだ。私からマリアを奪い取り、二人で寝やがった。
いいよ今日は一人で寝るから……
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