43話、戦争の余波


34日目。

朝ご飯を食べた頃、ゴールドが再訪した。十日ぶりかな?


「どうもどうも!前回よりも発展しておりますなぁ。さすがでございます!本日も、よろしくお願いしますね!」


というわけで、今朝は商談だ。





まず、集められただけの各種植物の種を受け取る。

本当にいろいろあるなぁ。なんの種かは説明を受けたが、説明されても分からないものが多い。ていうか、前世であったような物も多いな。全てエルフに預ける。


そして、香辛料や塩など。そういえば海が近いので、海塩をつくれるようにしてもいいかもしれないな。ドワーフに相談するか。


それから、細々したものの受け取り、預けられた鶏の確認、渡したミルクの報告など、細かい話を済ませた。


対価として、魔物素材と、この土地で育った作物などを渡す。野菜、乳製品、魔物肉加工品など。ゴールドは大層喜んでくれた。よかった。


今回は住民の追加はないようだ。だが、代わりに相談があるという。


「我が国のみならず、世界各地で魔王レギオンによる被害が広がっております。村や集落が襲われたり、都市を襲撃されたり。当然、兵士の損耗があるのです。兵士にはやはり男が多いですので、男手を失った家庭や、場合によっては親を両方失ってしまった子供たちも増えております。国や我が領としても孤児院の増設などの対策はしていますが、やはり限度というものがございましてですね。つきましては、移住を希望する母子や、孤児院が決まらなかった子供たちを、この街で住まわせてはくれないでしょうか。当然、資金や食料の援助は致します。この街にとっても、人が増えるのは悪いことではないと思われます。どうか、よろしくお願い致します」


とのことで。

まあ、住むところももうじき余裕ができるし、食料も、輸出できる程度にはある。

大人なら仕事もあるし、子供たちも受け入れる余裕はできてきている。

たった30日程度でよくここまで、とは思うが、やはりドワーフとスケルトンの無限労働編が強かった。いまやオーガにエルフまでいるからな。余裕もできる。


ということで、受けることにした。

とはいえ、一気にでは無理があるので、全部で500人を、ひと月あたり50人のペースでお願いした。……結構被害が広がっているんだな。国もあまり余裕がないようだ。

ひと月もあれば、まあ50人分の住む場所は建てられるだろう。戸建てではなければスグだ。頑張ってくれドワーフたち。


そういえば、道作りをする事業者が決まったそうだ。特級の機密保持契約を交わしたので、元ドワーフの村からの道作りでは魔物の貸出もお願いされている。スケルトンと海鎧だけのつもりだったが、他にも貸せたら貸そうかな。


ということで、商談などなどは終わり。

歓迎として昼ごはんはみんなで食べた。エルフたちがミルクをつかってアイスクリームを作っていたので、堪能した。砂糖ではなく果汁で甘味をつけられているため、数種類の味がある。美味い。


「これはこの土地の名物になるかもしれませんな。ゴールデンホルスタインの乳に、マジックトレントの実……幾らになることやら……はは」


ゴールドは驚き半分呆れ半分だった。たしかに両方希少だったな。忘れがちだけど、この辺の物は全部そうなんだよなー。





今回の移住者の件で、ゴールドはタキナに借りができた。

当然、ソレはすぐになにかしらで返すのだが。

そして、移住を希望する母子たちには貸しができた。彼らはゴールドに感謝するだろう。もちろん、タキナにもだが。

彼らはアグニの街の住民になる。彼らの好感度を稼いでおくのは、将来の儲けにも関わってくる。

ゴールドは、この街がもう少し発展した時に、自分の持つ商会の支店を置かせてもらおうと考えている。アグニの街としても悪くない話だろう。

そして、その時に客になるのは彼らだ。

ゴールドが今回得たものは、将来の客と、人道の面でのタキナとアグニの街からの信頼だ。


あくまで人道的に、あくまで友好的に。

しかし彼の行いの全ては、いずれ彼の商会の利益になる。

今回の件も、純粋で狂気的な商人にとっては、儲け話でしかなかったのだ。

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