31話、魔の森散歩
25日目昼過ぎ、ブラインが少し森を見ておきたいと言うので、私も一緒にいくことにした。
この辺りはもう魔物も少ないし、つまり危険もすくないだろう。
と、思っていたのだが。
「アレもトレント、あの奥のソレもトレント、ああ、タキナ殿の後ろのソレもトレントだな。……タキナ殿のテイムしている子供ではなく、大人のトレントだ。しかし、我らの居た森のトレントと違い、臆病なのだな。擬態が上手い」
どうやら、この辺りはトレントの溜まり場になっていたらしい。
……言われても普通の木にしか見えないねえ。
「ああ、その木の上にはステルススパイダーが居るな。タキナ殿を警戒している。しかし、ステルススパイダーもトレントも、そして先程いたインビジブルゴブリンも、みんな警戒心が強い。タキナ殿がとても強いということだろうか」
え、なにインビジブルゴブリンて。はじめてきいた。そんなの居たんだ。
どうやら名前の通り、不可視の魔法が使える頭のいいゴブリンだそうだ。めちゃくちゃ頭が良く、不可視になった群れで大型の魔物を奇襲して討伐するらしい。
ていうか何でわかるの、と思ったが、エルフは魔力を視れるそうで。透明になろうが擬態しようが、魔物は魔物の魔力があるらしく。
まあそれなら。
「そこだ、その腕の直線上に居る」
「はい、テイム……ホントにいた。インビジブルゴブリン、透明じゃなかったら普通のゴブリンみたいね」
インビジブルゴブリン。
不可視化の魔法が使える頭のいいゴブリン。
普通のゴブリンより全てのステータスが数段高い。
黒曜石を砕いてつくったナイフを愛用している。
群れで大型の魔物を奇襲し討伐する。奇襲からのジャイアントキリングがめちゃくちゃ楽しいと思っている。手柄を上げることより、大きな作戦の中にいられたという所に喜びを感じるタイプ。
基本的には肉を食うが、雑食。
「よろしくね、ブルゴブちゃん!」
「名前の癖が……いや、なんでもない」
新しい魔物ゲットだぜ。
この子は数体増やして、良い武器持たせて、奇襲部隊にしよう。普段は森の見回りをしててもらおうかな、エルフたちとは別の方向で。
また我が街が磐石になったのではないだろうか。楽しいなあ。
「もう少し見て回って、夕方には戻ろうか。この森の浅い所は凡そわかった」
とのことなので、また少しだけ見て周り、夕方に街に戻った。
ブルゴブちゃんはノーブルゴブリンのゴブちゃんと仲良くなった。どうやらノーブルだからといって無闇に従わせたりするわけではないようだ。仲がいいならなんでもいいが。
「魔の森と呼ばれているだけあって、魔力の流れがとんでもないところだな、この森は。我らでも酔うかもしれんな」
「酔う?ですか?」
「魔力酔いはわからんか……?」
どうやら空気中の魔力が高すぎると魔力酔いとやらになりやすいらしい。わからんね、うん……いや、あれか、ゼストの家の地下がそれに近かったのかな?エルフたちに地下には行かないように言っておこう。
「森の近くだが、この街はそれほど濃すぎない。やはり森に地脈が走っているのだろうな……いや、この流れはあの山から湧き出ているのか……?タキナ殿、もしかすると、あの山は森より何段も恐ろしいところかもしれないぞ」
魔の森の奥にある高い山。遠くて行ったことが無かったけど、やっぱりやばいところぽい。
……一回行ってみたいな。強い魔物がいれば、いくらでも欲しい。
近いうちに、泊まりで行ってみるか。誰を連れていくのがいいだろう……カイちゃんだけでいいか?マリも乗せていくか、氷欲しいし。
夕飯はまた調理班がつくってくれた。ピザのようなものと、フライドフィッシュみたいなもの。
どうやらドワーフ達が調理用の竃を造っていたようで、調理班はそれをしっかり活用している。
油はゴールドからの輸入に頼ってるためまだ貴重だが、そのうち作物の目処が立てば圧搾機も役に立つだろうという事だ。ドワーフ、なんでもつくるな。
ちなみに畑は凄く広がってきている。スケルトンが毎日増えるからね。リク、お疲れ様。毎日ありがとう。
土地柄めちゃくちゃはやく収穫できるので、今は少しセーブしている。余りかねないので。小麦とモロコシは増やすだけ増やして備蓄してもいいかなとは思っている。食料備蓄庫もつくってもらおう。
前回、ゴールドには、集められるだけの種類の植物の種を持ってきて欲しいと伝えておいた。
いずれ、大陸全ての作物をここで食べられるようにしたいなと思う。無理ではないだろう。楽しみだ。
「おなかいっぱい食べるものと、安全に住める場所。あとは……なんか娯楽施設とかつくりたいな。闘技場とかね。そのうち、そのうちかなー」
魔物同士の戦いとか面白そう。興行として多分世界で誰もやってないだろうな。血の気の多い魔物がいれば、そういうのもありかもしれないな。今は大人しい子が多いから、いずれそのうち。
「あとは……普通の住民が増えて欲しいけど」
イカれたドワーフ、奴隷、犯罪者、亡命エルフ、そして私と魔物たち。まあ、普通とは言えないだろう、皆。
普通の、普通に住みたいと思ってきてくれる人が増えたら、もっと街が普通に盛り上がるだろうな、と思った。……もう無理かもしれないけど。
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