32話、タキナの黒い馬


26日目。今日は砂漠のオアシスの迷宮を、改めて見に行こうと思う。

お供は、まず道中の移動にケルちゃん、中は暑かったので冷やしたメタスラちゃん、マリ、あとはレオ君かな。

ヒナさんはドワーフからの依頼でアビス三層で深海鋼を集めるそうなので、同行しない。しかしそうだな、魔物用の装備もいっぱいほしいし、二層班に加えて三層班も増やしたいな。また考えよう。


出発の前に朝ごはんをしっかり食べて、それから今日の分の魔物生成を……うーん、今のところなにも困ってないもんなぁ。候補としては、迷宮の火力としてレオ君を増やすか、労働力と歩兵としてのスケルトンを増やすためのリクを増やすか、奇襲部隊用のブルゴブちゃんを増やすか……

迷宮の火力も労働力も足りてるし、とりあえずブルゴブちゃん増やすか。奇襲部隊って何体要るのかわからないし、増やせる時に増やしておこう。ブルゴブ二号、よろしくね。


ケルちゃんにみんなと騎乗、荒野側へ飛ぶ。


道中何事もなく、砂漠の風も穏やかで砂も浴びず、オアシスに到着した。

ケルちゃんは水を飲んで休憩。中には入れるだろうが、今回は待っててもらおう。





「あっつい!けどメタスラちゃんの魔法のおかげですごくマシになってる。魔法凄いねぇ」


地獄の暑さが、日本の夏の朝くらいの暑さまでマシになった。魔法は凄いな、本当に。


さて、仮称オアシスの迷宮。

内部は相変わらず、地獄の様相だった。

赤く染まる火と溶岩の川、赤黒く草ひとつ生えない地面、高頻度で噴火する火山。

溶岩を泳ぐ巨大魚、地面を食い破るワーム、火山灰を浴びるワイバーン、山のように巨大な亀。


「いったいどう探索すればいいんだろう」


どこに下層への階段があるのかもわからない。

見た感じだと火山か?ひとまず向かうか。


あまり今欲しいなと思うような魔物は居ない。みんなちょっと環境依存というか、街には置けなそうな感じだ。使えそうなのはワイバーンくらいか?マグマのスライムとかなににつかうんだ。

と思っていると、目の前を黒いなにかが通り過ぎた。


「えなに?え?あれ?なんか通った?」


風と、置いていかれた音を感じる。ものすごく速いなにかが通った、と思う。ちゃんと見えなかったけど。

向かったであろう方向を見る。……黒いなにか、多分馬みたいなものが、だんだん小さくなっていく。


「え、速い!テイムー!届く!?……届いた!馬ちゃん!戻っておいで!」


あまりにも早すぎてびっくりしてテイムしちゃった。

黒い馬は、また爆速で私の前まで戻ってきた。速すぎる。音が追いついてないが。爆風オールバックだが。

さて、魔物情報を見よう。



ドゥームアパオシャ。

漆黒の化け馬。音を超える速度で走り、その速度から繰り出す突進で獲物を仕留め喰らう。

水を嫌うが、その速度をもって水の上をも走る事ができる。泳げないなら走ればいいを地で行く化け物。

体温がとても高いため、乗るには冷やせる鞍があったほうがいいだろう。



……メタスラちゃん、冷えた鞍になれる?なれるね。うん、ありがとね。乗ってみようね。


「うっひゃあああぁぁぁぁ速い速い速いうおああぁぁ!」


速すぎてチビるかと思った。怖いのもあるけど、一瞬で音速を超えるからG負荷で体が押し潰されそうになる。頑丈で助かった。


一旦帰るか。

迷宮から脱出し、ケルちゃんと合流。馬ちゃんに乗って帰ってみようと思ったので、ケルちゃんにはメタスラちゃん以外を乗せて帰ってもらう。


さて、馬ちゃんに騎乗。帰ろうか。


「あっちの方向へぇぇぇぇ!速い速いはやいはやあぁぁぁぁ…………ついた…………」


数分で帰れた。速い。速すぎる。

慣れてくるとクセになりそうな速さだ。


「この子なら山まで走れるか?木々が邪魔かなぁ……」


明日ちょっと試してみようと思う。騎馬、楽しいな。

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