26話、特級冒険者の実力



22日目、今日はせっかくヒナさんがいるということで、迷宮の下層を目指そうとおもう。

自称ではあるが、ロックドラゴンといい勝負できるくらい強いそうだ。想像もできないが、凄いのは間違いないだろう。


「全然任せてくれていいすよ!私、強いんで!」


とはいえ、本来の武器ではなく貸し武器をもっての参戦だ。ドワーフが打った鋼の大剣といえども、本来は魔導鋼製のものを使っていたようなので、実力は半減するはずだ。多分。





というわけで、一応いつものメンツとともにアビスの迷宮四層に来た。

前に来た時と同じように、呪詛が感じられるような墓だ。

ヒナさんも四層に連れてこれた。どうやら行きたい層に行ったことがある人が居れば、誰でも一緒に連れていけるようだ。楽でいいな。


ヒナさんが戦闘をみせてくれるらしい。


「スケルトンとかゾンビとかはまあいいっしょ。……あれ?スケルトンなんか変な感じするなぁ。まあいいや。スケルトンドラゴンとか、レイスとかを倒してみせますね!ワンパンすよ!」


ある程度進むと、スケルトンドラゴンとエンカウント。

前回も思ったが、こっちに見向きもしない。……何故?


「ありゃ?……まいいか。そおれっ!」


ヒナさんの体より大きな鉄の板のような大剣がぶんまわされ、スケルトンドラゴンに……届かない。届かなかったのに、スケルトンドラゴンは波に攫われた砂の城のように破裂粉砕した。

風圧で、ワンパンした。


「私、全属性の魔法を武器に付与出来るんすよね。今回は聖属性っす!この階層は余裕っすねさすがに」


どうやら、本当にマジで強いっぽい。

特級って凄いんだな。


結局四層は、大剣振り回し聖属性バラマキで全てワンパンだった。多分だけど、ドワーフを一般基準と考えた場合、スケルトンで一般人と互角くらいだと思うんだ。スケルトンなんかもう、大型の討伐の余波で消えてるが。特級ってマジですごいな……





というわけで五層の階段を見つけたため、降りる。

ゲート登録をして、五層を見渡す。


五層は、ひとつの大きな祭壇だけだった。


祭壇の中央に、ソレが鎮座している。

結構遠いが、デカいのがわかる。


「ヒナさん、アレは倒さないでもらっていいですか?」


「……いや、うん、私多分アレに勝てないすよ」


……いやそれは嘘でしょ。え、そんな強いのアイツ?ほんとに?じゃあ四層の無双はなんだったのだ。たしかに、あのドラゴンっぽいのはデカいけど……


まあいい、気を取り直して。


「じゃ、私のものにしちゃいますね。テイム!!」


「ああ、そういう能力なんすね」


無事、テイムできた。……なんだか、体が温かくなって、不思議な気分になった。なんだかわからないが、いい気分だ。


ああ、そうだ、魔物情報を見よう。

ドラゴンかと思ったが、もしかしたら違う?見てみようか。



ニーズヘッグ。

世界に仇なす悪のひとつ。

生み出した配下の蛇たちを用いて、世界を根元から腐り落とそうとした悪の巨竜。

今は『深海神殿』に封印されているという記録がある。封印についての記録は、創造神を崇める『ユリス教』の教皇のみが閲覧出来る秘密図書の最奥にある『真の書』に書かれている。「絶対に封印を解いてはならない」「世界の均衡を保つため」「知られてはならない」などの文言が並べられている。



え、なんか世界の秘密みちゃいました?

……ていうかアレ?テイムしてよかったんでしょうか?え、大丈夫?明らかやべーっていってんじゃん。やっちまった?あ、胃が痛くなってきた。


「だ、大丈夫すか?」


「…………まあいいや!よろしくねぇ!ヘッグちゃん!」


ま、私の配下になるわけだし!大丈夫っしょ!魔物判定だったわけだし!ね!大丈夫!知らね!





とりあえず帰宅。六層は明日でいいや。

ニーズヘッグはロックドラゴンと意気投合し、仲良くじゃれてる。ロックドラゴンの半分くらいの大きさだが、ロックドラゴンより強いらしい。ロックドラゴンが自分より上が来たって喜んでた。

土埃凄いからもっと遠くでやってくれと言っておいた。


そういえば、空になった五層には、大きな宝箱が置かれていた。

中身は、大剣。

ヒナさんが「それくれたらこの街に一生尽くします!」って言ったのであげちゃった。ドワーフへの武器発注は中断されたが、住民は増えた。やったね。


武器の名は『死を切り裂く者』

まず、重い。私だと何とか数ミリ浮かせれるくらいの重さだ。ヒナさんは軽々振り回していた。こわい。

とにかく硬くて頑丈。ロックドラゴンが全力で踏み付けても大丈夫。地面が先に壊れる。

そして、魔力の通りがものすごくいいらしい。魔法付与のヒナさんにぴったり。都合よすぎない?

特殊能力として、『不死属性を死に至らしめる事ができる』というものがあった。これは、たとえばゼストなんかの超越者をやれるという事だ。……ヒナはゼストにはなにがあっても勝てないと言っていたが。特級の化け物がビビるって大魔王凄いね。強すぎてよくわらんね。


とまあ、私には不要かつ運べすらしないものだったので差し上げた。強い住民が増えるのはいいことだ。


今日は新しい住民の歓迎会と称してまたパーティを開催して、色々飲み食いした。なんかもうちょっとでもめでたいとパーティしたくなっちゃうな。ドワーフは大騒ぎするし、ゼストもヒナさんも楽しそうだし、パーティにハマっちゃう気がする。

幸せだな。

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