7話、歩かなくていい
四日目の夜はいつもどおりみんなでご飯を食べて、すぐに寝た。……娯楽もなにかほしいなぁ。
そして五日目の朝。
今日は森へ、食料調達ではなく調査に向かう。
今日はちょっと深めに潜りたいと思う。真っ直ぐ進めば真っ直ぐ戻ってこれるだろう、多分。……任せたよサソリ君。
サソリの背に乗って森を進む。
サンドスコーピオンという名だが、森でもしっかりとスピードを出して進めている。そしてあまり揺れない。万能だな。
半時間ほど奥へ進んだ。遠くに見える山まで森が続いているため、ずっと森だ。
だが、植生が少し違うような気がする。大きな木が増えたか?
……なにかに見られているような気がする。
しかし周りに動くものは見受けられない。というか少しでも隠れられると私には見つけられるわけがない。
しばらく周囲を観察したが、全くわからない。
サソリ君もわからないそうだ。じゃあわからん。
いったいなんだったんだろう。絶対になにかにみられていたが……
気を取り直して周囲の探索だ。
この半時間、まったく魔物に出会わなかった。
魔の森って呼ばれているわりには大した事ないかも、と思ったが、そういえば2日目で実質殺されてたわ、と思い出した。
よくわからん食べられるかもわからん実や果実をあつめ、サソリ君の背にある、木の枝とかツルで即席で編んだカゴにいれる。荷物持ちは便利だな。
今日のテイムはどうしようかな、とぼんやりと考える。
蜘蛛ちゃんとオークのおかげで、食料調達はひとまずなんとかなっている。
体力と防御力の強化はひとまずロックドラゴンでじゅうぶんだろう。
サソリ君は探索時の荷物持ち兼護衛として役に立っている。
つまり三方抜けがない。あと必要なものってなんだろう。
今のところ、水分は果物でなんとかなっているし。
トイレは……まあ葉っぱがあるから、ね。そのうちドワーフに紙を頼もう。
ふわふわのベッドがほしい。娯楽もほしい。紅茶が飲みたい。焼肉がしたい。
娯楽と紅茶と焼肉はドワーフ次第だ。ベッドはどうだろうか。ふわふわの布団なんてこの世界にあるのだろうか。あっても家がないから置けないわ。家がほしい。家もドワーフにまかせるか……
「結局なにをテイムすればいいんだろう……」
考えに考え、考えるのをやめた。
今日はもう、次に出会った魔物をテイムしよう。たまにはそういうのもいいだろう。
そうとなればまた探索だ。
音を聞き、目で見て、魔物を探す。……なにか来る。
いままで聞こえなかった音がする。バキバキと、木の枝を踏みつけてくる音。木で見えづらいが、大きな影が近づいてくるのがわかる。振動が大きい。重そうだ。
そしてそれは、顔を見せた。
「はいテイム! よろしくね!!」
攻撃どころか敵対すらされる前にテイム敢行。
こちらもそれがなんなのか確信する前の、圧倒的スピードでの確定テイムだ。
「さて、この子は……背高いな、二足歩行……えっと、魔物情報、と」
フォレストサイクロプス。
森に適応したサイクロプス。他には例えば荒野にも砂漠にも草原にも適応種がいるらしい。
背が高くてでかい。身長が4mくらいか。武器は持っていないが、持たないのだろうか。
額のところに大きな一つ目がある。どうやら、頑張ればここから光線を出せるようだ。
光線を出すより殴る方がはやくて強いので出さないらしい。なんのための能力だよ。
いろいろと素材ぽいものを集めまくり、帰路につく。即席カゴはサイクロプスに持ってもらって、私はサソリ君に乗って帰る。
さっきの見られている感覚はサイクロプスからだったのかな、と思っていのだが、どうやら違うらしい。帰りにも同じような視線を感じだ。しかし視線だけだ。正体はわからなかった。明日また来よう。
さて、帰宅。ロックドラゴンは帰ってきて寝ている。一瞬だけ目を開けて、サイクロプスを見たが、すぐに寝直した。
蜘蛛ちゃんもオークも帰ってきている。食料調達は順調だ。オークは今日も一番自慢の果物を私に見せに来た。かわいいな。よしよし。
今日の肉も熱いイノシシだ。少し食べ、残りは蜘蛛ちゃんにあげる……つもりだったが、サイクロプスが欲しそうな目で見ていたため、半分こさせる。蜘蛛ちゃんは半分でも全然足りるらしいが、サイクロプスはちょっと物足りないようだ。食料調達、もう少し頑張った方がいいかもしれない。当分は自力でとってきてもらおうか。
サイクロプスは、今のところはあまり必要な作業がないため自給自足をしてもらおうと思うが、そのうち伐採やらの力仕事をまかせることになるだろう。
……いずれ、冬がくるかもしれない。そうなるかもしれないなら、暖をとる準備も必要だろう。薪を作るための木材は必要だ。
まだそこそこ暖かいため、気がはやい気がするが。……明日からは、暖かそうな魔物を探そうか。それなら砂漠か?いや、逆にそれはないか。
この辺りだと……やはり森で探すしかないか。
明日も森探索で決定だ。
今日もおなかいっぱい食べたので、蜘蛛ちゃんのふわふわに身を委ねて寝る。
明日も都合よく無事でありますように。
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