6話、ドワーフは総じてイカれを有している



「ワシは国境外れの村の村長をしておる。はぐれドワーフの村じゃ。イカれドワーフの村と言ってもいい。技術と知識を求めすぎて、人間の集団からはじき出されたアホどもの寄合じゃな。で、そこでは常に素材が足りていない。知識には代償が必要で、一番わかりやすい代償が素材じゃからな。つまり! 魔の森付近でとれるレア素材、そして……ロックドラゴンの鱗や牙などの欠片や排泄物なんかを回収させてほしい! それを対価に、我々も村をあげてタキナの充実した生活に手を貸そう!」


大変に魅力的な提案だ。たしかに、ロックドラゴンの鱗なんかはある程度ポロポロと転がり落ちているし、多分牙とかも欠けたり生えたりするんだろう。排泄物は……多分この子は荒野側でしてくれているんだろうけど、欲しがっているならあげてしまったほうが得だろう。

欲しいものはめちゃくちゃ多い。まず家、家具、食器、調理器具、火起こしができるもの、着替えもそう。……取引を拒否する理由がなかった。


「じゃ、こうしましょう。まず、貴方が何かを持ってくる。そして、貴方がそれらに見合うと思った分の素材を持って帰る。どうですか?」


「……ワシがぼったくるとは思わんか?」


「ぼったくりがわかったら、私は蜘蛛ちゃんに貴方をつけさせて、ロックドラゴンで訪問すればいいだけでしょう?」


「……ガハハハ! そうじゃよな! 参ったわい! ワシは嘘はつかん。誠実さだけで正気を保っておる。……見合うだけのものをもってこよう。任せておれ!」


「期待してますね」


「で、その前に、だ。……そこにある果物、食ってもいいか? 腹が減って死ぬ」


「……これはタダにしておいてあげますね」


狂った取引先をゲットした。

これから、まだまだQOLをあげていけそうだ。





四日目、朝。

蜘蛛ちゃんに肉集めをお願いし、オークには果物や食べられる植物を集めてもらう。

私はロックドラゴンにのり、砂漠の方に向かう。


今日の分のテイムはどう使おうか。

果物集め要員はクリア、火はドワーフがなんとかしてくれるだろう。

あとは、私の身をまもってくれる護衛か。


あんまり大きくなく、可愛いものがいいな。たとえば……ウルフとか? 他はそうだな、スライム系もいいかもなぁ。隠し持ったりできそう。

……砂漠にはいないだろうか。それらは明日から森で探せばいいか。


となると、砂漠でなにが見つかるかによる。

砂漠といえば……ワームとか?ワームはいらないかなぁ……


さて、ロックドラゴンのうえで果物をほうばってのんびり数時間、砂漠についた。


見渡す限り、砂。

ロックドラゴンは、砂を飲みながら、砂漠を進んでいく。

今日はいつもの巡回ルートを辿ってもらっている。夜には拠点に帰れるだろう。





砂、砂、砂。

魔物の影もない。……これは、今日の分はダメか?

そう思っていたが。


「ん、あれは……?あれ、魔物かな?」


視線の先に、うっすらと動くなにかが見えた。

魔物だろう。ロックドラゴンに、そちらに向かうよう伝える。

逃げなければいいが。


ゆっくりと近づくと、ようやくなにかわかるようになった。

こちらを見て、不思議そうにしている。


「……サソリ?」


どうやら、サソリのようだが。全く敵意がない。何故か。

……そうか、ロックドラゴンは敵判定にはならんか。そうだよな。今更だが、ロックドラゴンはでかすぎて何が何だかわからないんだ。


……サソリか。テイムしたとしたら、どんな使い方があるだろう。

毒があるだろうから、身の守りにもまあ、なるだろう。

見た感じ背中が大きいから、背に乗れたりもするかな?でもロックドラゴンにも乗れるし。

あとは……そう、私じゃなくて荷物を載せてもいいか。荷物持ちとして有用かもしれない。


「はいじゃあテイム! よろしくね!」


サソリのほうは何が起こったかわからなそうだったが、私に気付いて、手を振ってくれた。




サンドスコーピオン。

装甲のような外殻を持つ、砂漠の魔物。

攻撃にはしっぽの毒針と、両腕の盾にもなりそうな極厚のハサミをつかう。

六脚のため、走行の際の安定性が高い。

体高は0.5mほどだが、体長は2mほどか。しっぽが背側に丸まっているので、実際の見た目はもうすこしコンパクトだ。

背中が広いので、騎乗や荷物持ちにもよさそう。

蜘蛛ちゃんと同じように、カラカラと口を鳴らすのが面白い。




この子なら、それなりに小型だから森にも連れて行けるだろう。

ドワーフには、この子用の背嚢なんかもつくってもらいたいなと思う。

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