4話、QOLをあげるために



アサシンスパイダーは、イノシシのような魔物をもってかえってきてくれた。

そういえば魔物って食べていいのか? そういう常識とか禁忌とかを学ぶ暇もなく捨てられたから、全部手探りだ。


イノシシのような魔物は、死してなお体温が物凄く高く、毛にはダニなどが見受けられない。

これは多分生でもいけるだろう。馬も体温が高いから生で食えるんだったはず。多分。知らんけど。


「もしかして、私が食べられそうなお肉を選んでくれた……? え、健気! かわいい!」


わしゃわしゃと蜘蛛の頭を撫でる。

キュルルと、可愛い声で鳴く。もはやペットだ。名前は物騒だが。


「さてじゃあ、今日は生肉とフルーツで豪華な晩御飯! …………あ、蜘蛛ちゃん、お肉切り分けるの手伝ってくれる?」


ナイフも無いんだった。アサシンスパイダーの自慢の腕を使わせて貰うことにしよう。





がっつり食べて、夜。

お肉はめちゃくちゃ美味しかった。お腹は多分大丈夫だろう。多分。

余ったお肉は、さすがに置いておくのは怖かったので蜘蛛ちゃんに全部たべてもらった。

どうやら、溶解液で溶かしたりするタイプではなく、普通に咀嚼していた。

ロックドラゴンは、夜遅くに満足そうに帰ってきた。どうやら図体と同じく時間感覚もおおらからしい。蜘蛛ちゃんとなにかしら目線でやりとりして、すぐに寝てしまった。


「ひとまず、身の安全と、食料確保の目処は……一応、たったのかな。あとは服とかと、住む所……さすがに自分ではつくれないし。どうしたらいいんだろう。あとはアレだ、紙がほしいな……もう葉っぱで拭きたくない……」


まだまだ課題はいっぱいだ。

強い魔物をテイムできるだけでは、快適な暮らしはできないのかもしれない。


その日は解決策を思いつくわけもなく、昨日と同じく、ロックドラゴンの上で寝た。

……布団もほしいなあ。





三日目。今日も朝から食料調達だ。

肉は蜘蛛ちゃんがとってきてくれるが、果物は自分でとっている。これも取ってきてくれる魔物をテイムできたらいいが……テイムする魔物も、吟味しなければならない。今のところは都合よく出会えているのだが。

ちなみにロックドラゴンは食料をとってきてはくれない。岩石食って砂を飲んでるので、人間の食えるものに出会わないのだ。まあ、そこはロックドラゴンには期待していないので良いが。居るだけで助かっているのだから。


さて、一日一回のテイムは、翌日に持ち越すことはできない。つまり、抱えて終わることのないように効率よく使いたい。

いろんな魔物を見てから決められたらいいが、そんな贅沢も言えるほど充実してはいないので、今必要そうな能力を考えよう。


まず、自分を守る魔物。

防御力と体力はとんでもなく強化されたので、そこは心配ないが、たとえば拘束なんかされると無力なわけだ。そこから救助してくれる魔物がほしい。

食料調達をしてくれる魔物。

肉は蜘蛛ちゃんがもってきてくれるが、果物や魚なんかを持ってきてくれる子がいればまた捗る。

それから、火を起こせる魔物。

これはもう、便利も便利、人間である私にとっては最重要と言ってもいいかもしれない。生肉は美味しいが、焼いた肉が食べたい。

しかし、森の方では火をつかう魔物なんかはいないだろう、さすがに。


「となると、今日は果物をとってきてくれる魔物をテイムして、明日からの食料調達を蜘蛛ちゃんとその子に任せて私は荒野側を見に行って火をつかえる子を探す、ってのもありかー」


よし、そうしよう。

しかし、そうなると、魔物に出会わなければいけないわけだが。


「いつも見かけるサルみたいなやつはちょっとな……何匹もいればよさそうだけど、一匹だと弱すぎる気がするんだよね」


果物自体は、木の上でなくても、瀧奈の手の届く高さにも生えている。つまり木登り能力はほぼ不要。

ほしいのは、自分の身をある程度守れつつ、果物も持って帰って来れる、タフさか。


「ゴリラかクマみたいなのがいいなあ、強そうだし。……帰るまでに見つからなかったら、ひとまずサルでもテイムするかな」


というわけで、すこーしだけ深くへ探索だ。

都合よく、そういう魔物がいればいいが。


「……居るんかい!」


都合のいい魔物、見つけた。

ゴリラでもクマでもないが……豚が1番近いか?


二足歩行、手には木を折っただけの棍棒、豚のような顔、でっぷりとした体。


オークだ。

鼻をひくつかせながら、こちらへ歩いてくる。


「ブモー!!」


「はいテイムー!!」


オーク、ゲットだぜ。

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