第3話 三つ子×駄菓子 ①

「お姉ちゃん、面白いの売ってたよー!」

「なに…?また変なの買ってきたの?」

「変なのとは失礼な」

買い物袋を提げて近寄ってきた双未の言葉に、疑いしかない。

双未はよく変なものを買ってくる。

例えば蛇の骨格のキーホルダー。

例えば紫色の公衆電話の柄のうちわ。

なぜ蛇なのか。なぜ骨なのか。なぜ公衆電話なのか。なぜ紫色なのか。

しかも、うちわの時、買ってきたのは大晦日だった。

こんな風に、双未はほぼろくなものを買わない。

「今日のはただのお菓子だもん!」

「絶対ただのじゃないじゃん」

双未はごそごそと袋の中から、紫色のパッケージの、手のひらサイズの細長い何かを取り出した。

「じゃん!三つのうち二つはぶどう味だけど一つだけ超絶酸っぱい味が入ってるやつ!」

「商品名の制限でもかかってんの?」

「これを、三人でやろうと思うのだよ!」

「じゃあ満巳も呼ばないとだね」


「よっし満巳!かくかくしかじか!ということでやろう!」

「いいねやろう」

満巳は大体の場合ノリがいい。

「今回は二個買ってるからね!二回ともセーフだったらラッキー、ということで!」

私たちはそれぞれ一つずつ手に取って、口に含んだ。

うん、普通の味。

人工甘味料っぽい甘さだ。

二人を見ると、二人とも微妙な顔をしている。

「うぅん…。なんか変な味だなぁ。まあこんなもんか、添加物多そうだし」

「…心なしか酸っぱいような」

「…じゃあ、一回目に当たったのは満巳なのかな。双未は普段こういうの食べないし」

「多分そうなんじゃない?」

そして迎えた二回目。

またしても、一回目と同じ普通の味だった。

二人を見ると、さっきとは別な表情をしていた。

「えーと、双未…?」

「…甘い」

「…は?」

「えっ!?さっきより全然甘いんだけど…、なんで!?」

???

「満巳は?」

「……(*×*)」

あれ、満巳がなんか涙目。

「あれ。もしもし満巳ー?」

「うっ……」


つまりはこういうこと。

 一回戦  双未が負け(酸っぱいの強くて気付かなかった)

 二回戦  満巳が負け(思ったより酸っぱくて言葉も出ない)


そういえば、満巳は酸っぱいものや辛いものに極度に弱かったっけ。

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