第2話
「「いただきます」」
いざ、斗真作のフレンチトーストを目の前にすると、なんだか洒落たカフェに朝から来ているように感じる。斗真の家だから余計にそう思うのかな。
俺は斗真と真剣に交際することを決意した瞬間、きったねえ家をあとにして斗真の家に住むことにした。家賃も俺自身が払っていたし、俺がしたいことだったし、別に良いだろ?
俺は改めてフレンチトーストを見る。まだ熱々だ、出来立てだよというのを訴えるかのような白い湯気、パンの温かさで美味しそうに溶けているバニラアイス、それを俺はフォークを使って分断する。
バニラアイスの溶けた部分がフレンチトーストを通じて皿に広がっていく。とても甘そうだ。フレンチトーストを一口サイズに切り、その上にこれでもかというくらいにバニラアイスを乗せる。
「先輩、忘れてました。このクリームもどうぞ。」
いいところにクリームが来た。だがまずは、バニラアイス×フレンチトーストだ。
俺はゆっくりフォークを俺の口元に運ぶ。冷たいアイスと熱々のフレンチトーストがいい具合に絡み合って、喧嘩せずに溶け合っていく。いい甘さ加減だ。なんなら、噛まないで飲める勢いだ。
次は、クリームだ。ん?なにやら視線を感じる。視線の方を向くと斗真が俺をじっと見ていた。
「な、なんだよ。」
「いえ、なんでも。」
斗真は微笑みながらそれだけ言った。
まあいい。俺はそれよりも生クリーム×フレンチトーストを試したくて仕方がなかった。
また一口サイズ、いや、ちょっと欲張って二口サイズ分くらい切ってしまおうか。
その上にたっぷり生クリームを塗り、大きく開いた口の中に取り込む。またもやこれも、フレンチトーストの熱さ加減が生クリームを溶かして、フレンチトーストの一部と化している。これこそ、絶品だ。
「先輩、この上ないくらいに幸せそうな顔してますね。可愛いです。」
いけないいけない。どうやら心の声が感情に溢れてしまっていたみたいだ。
でもまあ、そんなこと言ってる斗真も幸せそうな顔をしているが。
「美味いよ。今まで食べたので一番美味い!!格別!!最高!!」
俺が言えるのはここまでだった。なんせ、こういうの言うの慣れていないからだ。不器用なりの俺からの感想だ。
でも、この斗真の表情からして、喜んでくれているみたいだ。よかった。
数十分経ったあと、俺はとある事に気づいた。
「そういえばさ、今日のシフトって何時から?俺は13時かららしいんだけど。」
斗真は、スマホを確認した。
「俺は…えっとですね…あぁ、同じ時間ですね!」
いつもだったら、またお前と一緒かよ!と言っていたことであろう。でも今は、なんか嬉しい。
「先輩」
「ん?」
斗真が椅子から立ち、俺の方へと向かってきた。そして、耳元で囁いた。
「耳、真っ赤ですよ」
「(ビクンっっ)」
危ねぇ…!変なスイッチ入るところだった…!こいつは、俺の耳ばっか狙ってきやがる。そんでもって、平然とにっこり笑顔でいやがんだもんな。でも、俺は思う。
「(もう俺の体は、斗真にしかコントロールができないのかもしれない…)」
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