第14話

俺は一通り心の中で決心した後、屋上を後にした。


今から向かう先は、斗真のところだ。あいつならまだ、校内にいるはずだ。あいつが頻繁に行く場所といえばどこだ…?


「(そうだ…!スマホで!)」


俺がブレザーのポケットに手を突っ込むと、いつもあるはずのスマホがない。

屋上に忘れてきてしまった…!


だが、今屋上に戻っている時間はない。とにかく斗真を探すのが俺のやることだ。

斗真の同級生に居場所確認だ!


「なあ!君!田中斗真のダチか?!」

『え?田中?ま、まあダチっていうかクラスメイトみたいな…?』

「斗真がどこに行ったか知らないか?」

『す、すみません。俺にはわからないです…』

「ありがとう。」


「そこの君、田中斗真のダチか?」

『まあ、はい。』

「どこに行ったかわからないか?」

『あーさっき、借りてた本を返さなきゃって図書室に…』

「ありがとう。さんきゅー」


斗真は本も読むヤツなのか?真面目な野郎だな。確か図書室は2階だったはずだ。斗真…待ってろよ!


ガタンっ


『もう…菊地くん。図書室のドアを壊しそうな勢いで開けないでちょうだい。』

「すまん、つい。あ、そうだ司書さん。ここに田中斗真ってやつ来なかったか?」

『あー田中くん?数分前に本を返しに来て、そのままどこかに行っちゃったわよ。』

「あ゙ーくそ…ありがとな。あとドアに関しては多分壊れてねえから大丈夫だ。じゃあな」

『走ったら危ないわよ!』


ったく、あんの野郎どこに行きやがる…また生徒に事情聴取かよ…


「なあ、お前、田中斗真のダチか?」

『え、あ、あの…』

「はいかいいえで答えろ」

『い、いいえ…』

「なるほどな。」


「なあお前、田中斗真のダチか?」

『は、はい。』

「あいつがどこに行ったかわかるか?」

『さっき図書室行きましたけど…』

「そっちは行った。他になにか情報ねえか?」

『うーん…さっき廊下を歩いているのは見ました。』

「どっち方面だ」

『向こうの校舎側かと…』

「サンキューな今度なんか奢ってやるよ」


あっちの校舎に一体なんの用があるってんだ…


少し歩いていると、階段のすぐそこの壁から真美がちらっと見えた。


「あれ、真美?なんでこんなところに…」


どうやら、真美は一人ではないようだった。誰か一人、男の気配がした。


「真美さん、好きです。付き合ってください!」


おぉっと…告白現場にばったり会っちまったな…お相手は誰なんだ…?


「私も斗真くんのことが好きです!よろしくお願いします!」


…はぁぁぁあああ?!?!!?!とうまぁぁぁぁああ?!!


おいおいおいおい、ちょっと待て。今もしや、斗真が真美に告白してんのか?

あれほど俺に愛をぶつけてきていたくせに?ふざけんなよ…


「おい!真美と斗真!!!」


真美は体をビクッとさせ、こちらに視線をよこした。そのあとに、斗真も体ごと廊下の外に投げ出してきた。


「え、先輩?!なんでここに?!」

「なんでここに、じゃねえだろ!!俺がどれだけお前を探したか!!!」

「なんで俺を探してたんですか?!」

「伝えたいことがあるからだよ…!!!すまねえなぁ、真美。斗真を借りていくぜ。告白成功した直後にこんなことになってすまねえなぁ!」


俺は斗真の腕を引っ張り、人気ひとけのない場所へと連れて行った。

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