第4話

「先輩、俺、先輩の家に行きたいです。」


「は?」


なんか田中斗真とかいう名前の後輩が俺の家に行きたいとか言い出したんだけど。


「俺らいつそんな仲になった?」


斗真は外国風にわからんのジェスチャーをした。

ふざけてんじゃねえよ。そして、俺の家に来てもなんもねえっての。


「別にいいんですよ!先輩の家の一部になりたいので!」


「…」


いやいやいやいや!怖いこと言わんでくれるかなぁ?!

大体、なんで俺のなの?!俺とデートの方がよっぽどお前のためになるんじゃねえか?…って俺も俺で何考えてんの?!


「…嫌だよ。なんでお前なんかに俺の家見せなきゃいけねえんだよ。」


斗真は、ちょっと拗ねた顔をした。


「もー先輩のケチぃ!良いじゃないですか!女じゃあるまいし。」


まあ確かにそうなのだが。女が来ていい部屋にはなっていないのは事実だ。

だったら男の一人や二人の方がまだ許せるのはそうだが、斗真はダメだ。


「ダメなもんはダメなんだよ。。」


「そうやってはぐらかすんですねっ!ひどいですよ。」


なんで俺が悪いみたいになってんだよ。俺が一番被害者だわ。


「まあ…食事とかならしてやってもいいけど?」


斗真は、いきなり抱きついてきた。


「おいやめろよっ!!!」


斗真はえへへ〜と言っていた。なに呑気な顔してんだよ。腹立つ。

つか、斗真ってどういう系が好きなんだ?顔的には和食な感じだけど。

日本人だからみんなそうなのか?いや、多分違うな。イタリアンな人もいるであろう。


「和食か?」


俺はつい声に出てしまった。


「俺はどちらかといえば洋食ですかね。」


うわ。和食顔が洋食とか言いやがった。早速浮気してんじゃねえよ。


「あ、も、もしかして先輩、和食が良かったですか…?!それならそうと言ってくださいよ〜!」


いや、俺何も言ってないんだが。何をどう勘違いしたらこんなアホが生まれるんだよ。


「まあとりあえず、イタリアン食べ行くか。」


斗真はとても驚いた目をしていた。


「え、洋食でもなく和食でもなくイタリアンなんですか?」

「なんだよ。嫌かよ?」

「なんか、先輩はイタリアンって顔じゃないなあって。」


なんだよ、イタリアンじゃない顔って。それつまり、おしゃれじゃない顔ってことか?まあそうだろうな。落ちるとこまで落ちた結果辿り着いた人生だからな。


「俺の行きつけのイタリアン料理店行こうか。」

、お友だちさんの行きつけなんですね。」

「やっぱり、とはなんだよ?」

「いえ、何でもございません。」


ったく。友達のってつけなかったら心の底から驚いていたんであろうな。失礼な奴め。


「じゃあ行こうか。」

「はい!行きましょう!」


斗真はめちゃくちゃ可愛い笑顔でそう言った。



***



俺は友達と行ったことがあるから驚きはしなかったが、斗真はずっと口を開けて驚いていた。こういうところにあまり来たことがないのか?まあ、俺の友達が行きつけなだけで俺は行きつけじゃないから俺が言えたことではないのだが。


「何食べる?」


斗真はメニュー表を見ながら「やばぁ…?!」「すご…?!」を連発している。

よっぽどここに来ないんだろうな。


「決まったか?」

「じゃあ、ナポリタンパスタで。」

「おっけい。じゃあ俺は、フォカッチャとミネストローネにしよう。」


俺は店員さんを呼び、注文した。


***


「はあ…美味しかったですね先輩」

「ああ、そうだな。」


さてこのあとどうするか。


「やっぱり、先輩の家行っちゃだめですか?」


斗真が子犬のようなくりくりした目で俺を見つめてくる。

だめだ。なぜかわからないが、「尊い」という言葉が頭に浮かんだ。


「わーったよ。招待してやるよ…」


俺がそう言うと斗真のくりくりした目の奥になにかキラキラ光るものが見えた気がした。すごく喜んでいるわけだな。


「じゃあ行きましょう!」

「は?」

「招待してくれるんですよね?先輩の気が変わらないうちに行かないと!」


つくづく世話の焼ける後輩だな…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る