第3話

ピピピピッ


「んんん…後5分…」


ピロンっ

ピピピっ


「…ん…るせぇ…」


ピピピっ

ピロンっ


「ぅるせえっつってんだろうが!!!」


ようやく、部屋が静かになった。てかなんか、通知来てなかったか?

俺は、スマホを見た。何件かメールが来ているっぽいが見えないので、メガネをかけよう。


スチャ。


よし。通知何が来てんだ?


――田中斗真さんからメールが2件来ています――


田中斗真…ああ、あのゲイか。


――先輩!今日もシフト入ってますよね?遅刻しないでくださいよ!


――先輩?お寝坊さんですか?可愛いですね。そんな先輩も大好きです。


なんだ?あいつは俺の彼女かなんかか?せっかく誰にも囚われねえ生活してたのによぉ。って待て。寝坊…?


今何時だ?!てか時計どこ?!あ、スマホで見れんじゃん。


「えっと…?9時13分…?俺のシフト何時からぁ…?」


――10月2日(土)9:00〜17:00――


……


「はぁ?!?!!ガチ遅刻じゃねえか!!!!やべえやべえ。店長に怒鳴られる…早く着替えねえと…もう朝飯なんぞ良いわ。コンビニで食えやいい。髪型はしっかりしねえと。急げ急げ!!」



***


「遅れてすみません!!!」


「菊地くんが遅刻なんて珍しいね。今日のところは見逃してあげるよ。その代わり、今日30分残業だ。残業代は出るから安心しなさい。」


「本当にありがとうございます…」


ようやくレジに入ると、斗真はくすくす笑っていた。


「なんだよ?」


「寝ぼけてますか?」


「はぁ?」


「エプロンはズボンの中に入ってるし、社会の窓開いてるし、名札つけ忘れてるし。」


「え?」


斗真の言う通りだった。おいおい、いい大人がなに寝ぼけてこんなんなってんだよ…


「ちょっと裏行ってくる。」


俺がそう言うと斗真は、はい、いってらっしゃい、と言った。



***


「あ、戻ってきましたね。」


「あ、ああ。あのままじゃ到底お客様の目に映れないからな。俺のせいで、店の評判が悪くなるからな。」


「そうですね。」


今は集中だ、集中。


にしても、俺の後輩ってことだから新人…だよな?俺より接客が上手いのはなんでだ。


「…い。おい店員」


はっ。すっかり斗真に気を取られていた。


「は、はい。なんでしょう。」


「なんでしょうじゃねえよ。俺の話聞いてたか?」


「すみません…」


「ったくよお。これだからコンビニのバイトの輩は嫌いなんだ。」


じゃあここ来なきゃ良いじゃん。絶対文句を言うための場と化してるだろ。


「はあ。そこのピース(タバコ)取ってくれ。」


「年齢が確認できる身分証明書をお持ちでしょうか。」


「あぁ?!俺が20未満に見えるのか小僧?いい加減にしろよ!!!!娯楽の金しか持ってきてねえんだよ!!!」


「ですが年齢を確認できるものがないと…」


「黙れ!!ちびが目上に口答えすんじゃねえ!!!はあ。もういい。帰る。」


とっとと帰ってくれ。店にいい迷惑だ。あいつ、出禁だな。



***



「先輩!大丈夫でしたか!?」


俺が裏でゆっくり飯を食っていると斗真も休憩に入ったのか、俺を心配しに来てくれた。


「ああ。大丈夫だ。あれぐらい、慣れたもんだぜ。」


「慣れてしまうのもどうかと思いますが、先輩が無事なら何よりです。」


意外に可愛いんだな、斗真の笑顔って。…って、俺何考えてんだ?!?!

可愛いって…?!


「先輩?どうしましたか?顔、赤いですよ?」


斗真の顔が近づいてくる。

ドクンドクン

心臓うるせぇ…!

ドクンドクン


ピポポンピポポン


「い、いらっしゃいませぇ〜…!」


あっっぶねえ!なんとか持ち堪えたわ。

つーか男相手にドキドキするとかありえねえから!!!


ちらっと横目で斗真を見ると…


「(なにこいつ、しょんぼりしちゃってんだよ…)」


俺はいつも常備しているのど飴を斗真にあげてみた。


「え?」


「ん。やるよ。」


斗真はそれを受け取ると、んふふと言っていた。

斗真を見るとそいつはにっこりしていた。


「(どんだけ俺のこと…好きなんだよ…!)」


そのあとは、お互い順調に仕事が進んだ。

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