いまだかつてない非現実が俺に

第49話 衝撃

　突然の襲撃に、敵は一瞬の混乱に陥った。その隙を逃さず、ライカンは素早く3人の男に向かって突進した。彼の動きは獣のように俊敏で、相手が反応する前に距離を詰めていた。ライカンの目は鋭く光り、その姿は戦いに飢えた狼そのものだった。

　一方、俺とルカは残りの2人と向き合った。互いに目配せし、息を合わせて動き出す。俺は右の男に、ルカは左の男に向かって突進した。夜の闇の中、剣を構える音が静寂を破る。

「くそっ！」右の男が叫び、慌てて武器を構える。しかし、俺の動きの方が一瞬早かった。剣を振り下ろし、相手の武器を弾き飛ばす。金属がぶつかり合う音が、森の中に響き渡る。

　ルカも負けじと相手に立ち向かっていた。彼の剣さばきは正確で、相手の動きを完全に読み切っているようだった。ルカの剣が空気を切り裂く音が聞こえ、敵の攻撃をことごとく受け流していく。

　ライカンの方を見ると、彼は既に1人を倒し、残りの2人と激しく戦っていた。その姿は、まさに狼のようだった。ライカンの爪が月明かりに反射し、敵の肉を引き裂く。悲鳴が夜空に響き渡る。

「シーク、気をつけろ！」ルカの声が聞こえ、俺は咄嗟に身を翻した。かすかに風を切る音がし、敵の刃が僅かに俺の頬をかすめた。頬に温かいものが流れるのを感じたが、今は気にしている場合ではない。

「ありがとう、ルカ！」俺は感謝の言葉を投げかけながら、再び攻撃の態勢に入る。夜の森に、剣戟の音が響き渡った。敵の動きを見極め、次の一撃を繰り出す。

　俺は深呼吸をし、全身に力を込めた。「身体強化（ブースト）！」と叫ぶと同時に、体内から湧き上がる力を感じた。筋肉が膨らみ、血流が加速するのを感じる。さらに、覚醒で得た新たな能力（アビリティ）を発動させる。「増幅（エンハンス）！」

　瞬間、俺の体は光り輝き、筋肉が膨れ上がるのを感じた。視界が鮮明になり、周囲の動きが遅く見える。この状態なら、敵の動きも容易に読み取れる。まるで世界の時間が遅くなったかのようだ。

　一方、ルカも負けじと能力（アビリティ）を発動させていた。「雷纏（サンダークロー）！」彼の周りに青白い電気が走り、まるで雷を纏ったかのようだ。ルカの体から放電される青白い光が、夜の闇を切り裂く。

　俺は驚異的なスピードで敵に接近し、剣を振るう。敵は俺の動きについていけず、ただ必死に防御するだけだ。一撃、また一撃と、確実に敵の体力を奪っていく。剣が敵の防具を砕く音が、森の静寂を破る。

　ルカの方を見ると、彼は電気を纏った状態で敵を翻弄していた。敵が触れようとすると電撃が走り、相手を痺れさせる。その隙を狙って、ルカは正確な斬撃を繰り出す。電撃に打たれた敵の悲鳴が、夜空に響き渡る。

「くそっ！何なんだ、こいつら！」敵の一人が叫ぶ。しかし、もはや後の祭りだ。俺たちの連携は完璧で、敵に隙を与えない。

　ライカンも負けてはいなかった。彼の爪と牙が月明かりに輝き、敵を次々と倒していく。狼の遠吠えのような雄叫びが、戦場に響き渡る。

「シーク、左！」ルカの声が聞こえ、俺は即座に反応する。左から迫ってきた敵の攻撃を、間一髪でかわす。そして、その隙を突いて反撃。剣が敵の胸を貫く。

「ルカ、後ろ！」今度は俺が警告を発する。ルカは素早く身を翻し、背後から忍び寄る敵を電撃で打ち倒す。青白い光が闇夜を照らし、敵の断末魔が響く。

　戦いは熾烈を極めた。剣と爪が空気を切り裂き、悲鳴と雄叫びが入り混じる。地面は血で濡れ、木々は戦いの痕跡を刻む。しかし、俺たちの連携は崩れない。

「はあっ！」俺は渾身の力を込めて、最後の一撃を繰り出す。剣に全身の力を込め、敵の胸元めがけて突き出した。鋭い叫び声とともに、剣が敵の防御を破る。敵の体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。

　同時に、ルカも決定打を放つ。雷を纏った剣が、残りの敵を貫く。青白い光が闇夜を照らし、一瞬にして戦場を包み込んだ。雷鳴のような音とともに、敵の体が弾け飛ぶ。

　ライカンも最後の敵を倒し終えていた。彼の爪から血が滴り落ちる。獣のような目つきが、徐々に人間らしさを取り戻していく。

　数秒後、光が収まると、敵全員が地面に倒れていた。俺たちの勝利だ。戦場には、倒れた敵と破壊された武器が散乱している。空気は血の匂いで重く、戦いの余韻が漂っていた。

「ふう……やったね、シーク」ルカが息を整えながら言った。彼の体から青白い電気が消えていく。汗で濡れた髪が、額に張り付いている。

「ああ、お前のおかげだよ」俺も深く息を吐き出す。体から力が抜けていくのを感じる。「しかし、この能力（アビリティ）、まだ使いこなせてないな……内容もあまりよくわかってないし……」俺は自分の手を見つめる。まだ微かに光を放っている。

　ライカンが近づいてきて、にやりと笑った。「お前ら、よくやった」彼の声には、誇らしさが滲んでいた。ライカンの体には無数の傷があったが、それらはみるみるうちに治っていく。彼はそれを気にする様子もない。

　三人で顔を見合わせ、小さく笑う。戦いの余韻が残る中、夜明けの光が少しずつ森を照らし始めていた。新しい朝の訪れとともに、俺たちの冒険はまた新たな局面を迎えようとしていた。

「さて、これからどうする？」ルカが尋ねた。彼の目には、まだ戦いの興奮が残っている。

「まずは傷の手当てだな」俺は答える。「それから、この連中の身元を調べる必要がある」

　ライカンは静かにうなずいていた。

　三人は静かに倒れた敵たちに近づいた。戦いの熱が冷めていく中、これからの展開に思いを巡らせる。この戦いは終わったが、新たな謎と危険が待ち受けているのかもしれない。そんな予感とともに、俺たちは朝日に照らされた森の中で、次の行動を決めようとしていた。