前のエピソード――第31話　新たな絆、新たな冒険

「おーい、パーティ申請が無事完了したよ！」俺は嬉しそうに声を上げた。

　ルカとテックは顔を上げ、期待に満ちた眼差しで俺たちの方を見た。ルカの表情には興奮と喜びが混ざり合い、テックは少し緊張しながらも期待に胸を膨らませているようだった。俺たちが近づくにつれ、二人の表情がどんどん明るくなっていくのが感じられた。その様子を見て、俺たちも自然と笑顔になった。

「どうだった？全部上手くいったの？」ルカが目を輝かせながら熱心に尋ねた。その声には、新しい冒険への期待が溢れていた。

　俺は胸を張り、誇らしげに笑みを浮かべながら答えた。「ああ、完璧にうまくいったよ。これで俺たちは正式に一つのパーティとして認められたってわけさ。これからは公式な冒険者グループとして活動できるんだ」

　テックは少し恥ずかしそうにしながらも、喜びを隠せない様子で頷いた。彼の目には、新しい仲間たちとの冒険への期待が光っていた。「よかった。本当に嬉しいよ。これから改めて、みんなとの冒険を楽しみにしているよ。よろしくお願いします」

　リリルも晴れやかな笑顔で会話に加わった。彼女の声には、新しい仲間たちとの絆への期待が込められていた。「素晴らしいわね。これからみんなで素敵な冒険ができるのを思うと、胸が躍るわ。きっと素晴らしい経験になるはずよ」

　俺はルカとテックの方に向き直り、好奇心から新しい質問を投げかけた。新しいパーティの結成で高まる期待感が、俺の声にも表れていた。「そういえば、二人はどんな依頼を見つけたんだ？俺たちの最初の冒険にふさわしいものを選んでくれたんだろう？」

　ルカが少し興奮した様子で答えた。彼の声には、これから始まる冒険への期待と興奮が溢れていた。「ああ、面白い依頼を見つけたんだ。狼牙族（ろうがぞく）という特殊な種族の冒険者たちの護衛依頼なんだよ。珍しい経験になりそうだ」

「狼牙族？」俺は好奇心をそそられ、少し驚いた様子で尋ねた。「聞いたことのない種族だな。どんな特徴を持つ種族なんだ？」

　テックが知識豊富な様子で説明を始めた。「狼牙族は、実は昔の強大な力を持つ異世界人が、自身の遺伝子を高度な技術で組み換えて創り出した特殊な種族なんだ。彼らの最も特徴的な外見は、狼に似た耳と尻尾を持っていることだ。人間とも獣人とも違う、独特の魅力を持つ種族なんだ」

「へえ、なんだか面白そうな種族だな」俺は興味深そうに聞き入った。この未知の種族について知ることで、これから始まる冒険への期待がさらに高まるのを感じた。

　テックは続けた。彼の声には、この種族の複雑な立場を説明する慎重さが感じられた。「彼らは強大な力を持つ異世界人の血を受け継いでいるから、個々人の実力はかなり高いんだ。多くの狼牙族は優れた戦士や魔法使いとして知られているよ。だが、その一方で彼らには少々厄介な特徴もあってね。彼らは概して美男美女が多いんだ。それゆえに…」

「それゆえに？」リリルが首を傾げ、好奇心に満ちた表情で尋ねた。

「近年は、残念なことに大人数で狼牙族が狙われる事件が増えているんだ」テックは少し表情を曇らせながら説明を続けた。「彼らは異世界人の血を引く強い種族ではあるんだけど、その美しさゆえに人身売買の標的にされることも少なくないんだよ。」

「なるほど」俺は腕を組んで真剣な表情で考え込んだ。「そういう事情があるから護衛が必要なんだな。単なる護衛任務以上に、重要な意味を持つ依頼かもしれないな。これは本当に興味深い依頼だ」

　リリルは眉をひそめ、少し心配そうな表情で疑問を投げかけた。「でも、そんな重要で危険な任務、私たちみたいな新米の弱いパーティーでも本当に受けられるの？大丈夫なのかしら？」

　ルカは自信に満ちた表情で答えた。彼の声には、仲間たちを安心させようとする温かさが感じられた。「心配しなくても大丈夫だよ。狼牙族自体がかなりの実力者揃いなんだ。大人数で動いている狼牙族を狙うような無謀な輩はそうそういないんだよ。だから僕たちの役割は、実質的にはお飾り程度のものなんだ。でも、それでも彼らの安全を確保する上で重要な役割を果たせると思うんだ」

　ルカは、俺の方を向いた。彼の目には、リーダーとしての俺の判断を尊重する姿勢が見てとれた。「どうだい、シーク？この依頼で良いと思うかい？僕たちの最初の冒険としては、経験も積めるし安全面でも問題ないと思うんだけど」

　俺は一瞬考え込んだが、すぐに決意を固めて頷いた。「ああ、良いと思う。面白そうだ」

「よし！」ルカは嬉しそうに拳を上げ、その目は冒険への期待で輝いていた。「じゃあ、さっそく受注手続きに行ってくるよ。みんな、準備を始めようか！」

　ルカが受注手続きに向かう中、俺はテックの方を向いて、新たな疑問を投げかけた。「そういえばテック、さっきの話を聞いていて気になったんだけど、異世界人って本当にみんな強いものなのか？狼牙族の話を聞いていると、異世界人の血を引くだけでかなりの実力者になれるみたいだけど」

　テックは少し驚いた表情を見せたが、すぐに説明を始めた。彼の声には、この複雑な話題を分かりやすく伝えようとする真摯さが感じられた。「ああ、確かに一般的にはそう言われている。異世界人は強いという印象が広まっているな。」

　俺は首を傾げながら、自分の経験を振り返りつつ続けた。「そうなのか。俺とリリルも元は異世界人って話はしたよな、リリルはDランクの冒険者だし、俺なんかはこっちに来た時にゴブリンにすら苦戦してたんだよ。だから、異世界人が強いっていう話には少し違和感があるんだ。実際のところはどうなんだろう？」

　リリルも会話に加わり、自分の経験を共有した。「そうね。私も経験からすると、必ずしも異世界人が強いっていうのは実感がないわ。むしろ、この世界の人たちの方が強い印象さえあるくらいよ」

　テックは頭を掻きながら、少し困惑した表情で言った。「あぁ、そうだな。」彼は一瞬言葉を選ぶように間を置いた。

　テックは慎重に言葉を選びながら続けた。彼の声には、この複雑な話題を正確に伝えようとする真剣さが感じられた。「実は、通常の場合、戦闘経験のない人がこの世界に来てすぐにゴブリンを倒すのは、かなり難しいことなんだ。それに、シーク、君が俺を下したことも...正直言って、普通ではありえないことだ。」

　テックは深呼吸をして、さらに詳しい説明を始めた。「実は、異世界人が強いと言われる理由には、転移の過程に秘密がある。異世界人が転移させられる時、身につけている物以外はすべて魔力に変換される。」

「魔力に変換？」俺は驚きを隠せずに聞き返した。その概念の斬新さに、思わず息を呑んでしまった。

　テックは頷いて続けた。彼の声には、この驚くべき現象を説明する興奮が感じられた。「そうなんだ。そして、驚くべきことに、その変換された魔力はすべて転移させられる異世界人に吸収されるんだ。だから、多くの異世界人は、この世界に来た時点で既にかなりの魔力を身に付けていることになる。これが、異世界人が強いと言われる主な理由だ。」