第31話 新たな絆、新たな冒険
テックとルカが部屋を出ていった後、静寂が訪れた。部屋の空気は少し重く感じられ、窓から差し込む柔らかな光が、二人の姿を照らしていた。しばらくの間、俺とリリルは黙って座っていた。互いの呼吸音だけが、静かな空間に響いていた。やがて、リリルが深呼吸をし、ゆっくりと口を開いた。
「ねえ、シーク」リリルの声には好奇心と少しの緊張が滲んでいた。彼女は俺の目をまっすぐ見つめ、少し躊躇いながらも続けた。「シークはどこからきたの?」
俺は少し驚いた様子で彼女を見つめ返した。その質問の意図を察し、「地球だよ。わかる?」俺の声には、期待と不安が混ざっていた。
リリルは一瞬、首を傾げ、困惑した表情を浮かべた。その表情に、俺の心は少し沈んだ。しかし、次の瞬間、彼女の目が大きく見開かれ、驚きと喜びに満ちた声を上げた。
「え?地球?まさか……私も地球出身なの!日本で育ったのよ!」リリルの声は興奮で震え、目には涙が光っていた。「信じられない!こんな偶然があるなんて!」
俺は驚きのあまり、一瞬言葉を失った。心臓が激しく鼓動し、頭の中が真っ白になった。しばらくして、やっと声を絞り出した。「本当か?まさか……ここで同郷の人に会えるなんて」俺の声も、感動で少し震えていた。
リリルは嬉しそうに何度も頷いた。彼女の目には涙が溢れ、頬を伝って落ちていった。「シーク、私たち、一緒に故郷の話ができるじゃん。ほんとに嬉しい!」彼女の声は、喜びと懐かしさで溢れていた。
俺も思わず笑顔になり、目頭が熱くなるのを感じた。「ああ、そうだね。色々と話したいことがあるよ」俺の声には、これまで抑えていた故郷への思いが込められていた。
二人は互いに見つめ合い、共通の出自という絆を確かめ合った。その瞬間、部屋の空気が一変した。これまでの緊張感は消え、温かな親密さに包まれた。新たな冒険の仲間としてだけでなく、遠い故郷を共有する特別な友人としての関係が、確かに芽生えたのだった。
しばらくの間、二人は言葉を交わすことなく、ただ互いの存在を噛みしめていた。やがて俺は深呼吸をし、立ち上がった。リリルに向かって、少し照れくさそうに提案した。「とりあえず、あの二人が依頼を持ってくる前にパーティ申請をしに行こう。色々話したいけど、今はそれが先決でしょ?」
リリルも立ち上がり、目元の涙を拭いながら同意するように頷いた。彼女の表情には、まだ興奮の余韻が残っていた。「そうね、良いアイデア。早めに手続きを済ませておけば、みんなが戻ってきたときにすぐに行動できるもんね。それに……」彼女は少し恥ずかしそうに微笑んだ。「パーティ申請の後なら、ゆっくり話す時間もできるかもしれないし」
二人は互いに微笑み合い、新たな絆を感じながら部屋を出た。廊下を歩きながら、二人の間には言葉にならない親密さが流れていた。ギルドの受付へと向かう足取りは軽く、これから始まる冒険への期待と、故郷を共有する喜びで胸が膨らんでいた。
ギルドの受付に到着すると、二人は少し緊張した面持ちで冒険者カードを取り出した。受付の女性は、いつもの優しい笑顔で二人を迎え、カードを受け取った。彼女の表情には、二人の間に何か特別なものが生まれたことを察したような、温かな理解が浮かんでいた。
「新規パーティの申請をお願いします」と俺が言うと、受付の女性はカードを丁寧に確認し始めた。その瞬間、彼女の表情が変わり、目が大きく見開かれた。
「あら、シーク様ですね」受付の女性の声には、驚きと喜びが混ざっていた。「冒険者ランクの更新があります。」
俺は思わず声を上げた。驚きと戸惑いが入り混じった表情で、受付の女性を見つめた。「え?ランクの更新?」
受付の女性は優しく微笑みながら、丁寧に説明を始めた。「はい、エレクトロビックスパイダー討伐が高く評価され、ランクが上がりました。心からおめでとうございます」彼女の声には、純粋な祝福の気持ちが込められていた。
俺は驚きと喜びが入り混じった複雑な表情で、受付の女性を見つめた。言葉が出てこず、ただ「そうだったんですか。ありがとうございます」と呟くのが精一杯だった。隣では、リリルが嬉しそうに微笑みながら、俺の肩を軽く叩いていた。
受付の女性は続けて説明した。その声には、少しの興奮も混ざっていた。「新しいランクはFランクです。シーク様の活躍に大いに期待しています」
俺は深く息を吸い、感謝の気持ちを込めて新しいカードを受け取った。手が少し震えているのを感じながら、「ありがとうございます」と言った。そして、気を取り直すように続けた。「それと、新規パーティの申請についてですが……俺がリーダーになりたいのですが、よろしいでしょうか」
受付の女性は温かな笑顔で頷いた。その表情には、俺の成長を見守るような優しさがあった。「もちろんです。承知いたしました。シーク様がリーダーとなる新規パーティの申請を、直ちに進めさせていただきます」
リリルは、俺の緊張を和らげるように、横から嬉しそうに声をかけた。「パーティのメンバーは、シークと私。それから新人冒険者のテックにルカきゅ……ルカです」
受付の女性はそれを丁寧に用紙に書き込んだ。彼女の動作には、新しいパーティの誕生を祝福するような優しさが感じられた。「パーティメンバーの確認ができました。」彼女は少し声を落として、アドバイスを加えた。「一時的にパーティメンバーが増える場合は申請は必要ありませんが、恒久的に増える場合はまた申請してくださいね。皆様の冒険が素晴らしいものになりますように」
その温かな説明と祝福の言葉を聞いた俺たちは、心からの感謝の言葉を述べて受付を後にした。二人の足取りは軽く、これから始まる新しい冒険への期待と、互いの存在を再確認した喜びで胸が膨らんでいた。
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