第13話 依頼
医務室を出た後、宿に向かった。今日の試験で疲れ果てていたが、シャワーを浴びてさっぱりしたいと思った。
宿に着くと、自分の部屋へ直行した。荷物を置くや否や、シャワールームへ向かう。温かい湯が体を包み込み、緊張と疲れが少しずつ洗い流されていくのを感じた。
シャワーを終えて部屋に戻ると、ベッドの柔らかさが急に魅力的に感じられた。今日の出来事を振り返りながら、ゆっくりとベッドに横たわる。「明日からは冒険者としての新しい生活が始まるんだな」と思いながら目を閉じた。疲れていたせいか、すぐに深い眠りに落ちていった。
この街に着いてから3日目の朝、目覚めると体が軽く感じられた。昨日の試験の疲れは完全に取れており、右の脇腹にできていた切り傷も治っていた。窓から差し込む朝日を見ながら、今日から始まる冒険者としての生活に胸が高鳴るのを感じた。「よし、まずは簡単な依頼から始めよう」と決意を新たにしながら、ベッドから起き上がり、朝の準備を済ませ、宿の朝食をとって、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルド内に着くと、さすがに朝早くから飲んでいる奴は少ないのか、テーブル席にはあまり人がいなかった。
依頼を受けるために掲示板を見たが、どれがどの程度の難しさなのか全く判断できず諦めて、冒険者ギルドの受付カウンターに向かった。
今日の受付は金髪の男性だった。「何かご用ですか?」と聞かれ、俺は「昨日適正試験を受けて合格と言われたんですが、何をすればいいのか全く分からなくて」と答えた。
受付の男性は優しく微笑んで答えた。「まず、冒険者カードを作成しましょう。その後、初心者向けの依頼をご紹介します。簡単な仕事から始めて、徐々に経験を積んでいくのがいいでしょう」彼は引き出しからカード一枚を取り出し、俺に差し出した。
「こちらが冒険者カードです。このカードは身分証明書としても扱えます。紛失されますと、再発行に1週間と手数料がかかります。なくさないよう気をつけてください」
俺はカードを受け取り、感謝の言葉を述べた。「ありがとうございます」
カードの表には、俺の名前といつ撮られたのか分からない顔写真が付いており、名前の横にGランクと書かれていた。
裏を返すと、「討伐数0」「赤依頼0」「緑依頼0」「黄色依頼0」と書かれていた。
依頼の色などのことも気になったが、それよりも宿に泊まるためのお金を稼ぐために、初心者依頼を受けなければと思い、受付の男性に「初心者向けの依頼を紹介していただけますか?」と尋ねた。
受付の男性は頷き、依頼板の方を指さした。「あちらの緑色のエリアにある掲示板の依頼が初心者向けです。例えば、街の中で簡単に行える依頼のみがあります。
戦闘に自信があるなら、赤色のエリアの掲示板をご覧ください。討伐依頼などがあります。
あちらの黄色のエリアの掲示板には、主に隠密が必要な依頼が多数ございます。モンスターの卵や未成熟のモンスターの捕獲、それに敵国の要人の暗殺などの依頼が多く載っております」と各エリアを手で示しながら丁寧に説明してくれた。
受付の男性はさらに続けた。「忘れていました。冒険者になられた方には特別なアイテムをお渡ししています」そう言って、彼は引き出しから小さな箱を取り出した。
「これは特殊なネックレスです。アイテムボックス機能が付いています」彼はネックレスを手に取り、説明を続けた。「このネックレスを身につけると、一定量のアイテムを収納できるスペースが生成されます。冒険者にとって非常に便利な道具です」
俺は感謝の気持ちを込めて、「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」と言って、ネックレスを受け取った。手のひらに乗せてみると、軽くて丈夫そうな作りだった。
「使い方は簡単です。ネックレスに触れながら、収納したいアイテムに触れるだけです。取り出す時は取り出すアイテムをイメージしてもらえれば大丈夫です。慣れるまで少し練習が必要かもしれませんが、すぐに使いこなせるようになりますよ」受付の男性は親切に説明してくれた。
俺はネックレスを首にかけ、一度剣を鞘ごとアイテムボックスに出し入れしてその感覚を確かめた。「使い方の感覚はわかりました。では、依頼を選んでみます」と言って、緑色のエリアの掲示板に向かった。
俺が緑色のエリアの掲示板でどの依頼を受けるか悩んでいる時、肩をトントンと叩かれた。
振り返ると、見知らぬ男性の冒険者が立っていた。彼は親しげな笑顔を浮かべながら言った。「よお、新人さん。緑エリアの依頼を探してるみてえだけどよ、俺のパーティーと一緒に赤エリアの依頼を受けてみないか?」
俺は驚きと戸惑いを隠せずに答えた。「え?でも、僕はまだ初心者で……赤エリアの依頼は難しすぎるんじゃ……」
男性は軽く笑いながら言った。「大丈夫だ。お前さんの昨日の試験見てたよ。やるじゃねえか。俺はリーク。Eランクの冒険者だ」
俺は戸惑いながらもリークの提案に乗ってみることにした。「わ……わかりました。シークです。よろしくお願いします!」そう返事すると、リークは
「かしこまらなくていい。お前さんはそこら辺のFランクよりも強いぜ。むしろこっちから願いたいとこさ」
リークはそう親しげに笑いながら、俺の肩を軽く叩いた。「よし、じゃあ早速依頼を見に行こうぜ。俺のパーティーメンバーを紹介するよ」そう言って、彼は赤エリアの掲示板へと歩き出した。俺は少し緊張しながらも、期待感を胸に彼の後を追った。
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